講演情報

[22-O-J002-04]分泌物貯留例へのジェントルスティム介入

*平石 育栄 (埼玉県 介護老人保健施設あげお愛友の里)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】
介護老人保健施設において誤嚥性肺炎は入所者のADL低下や入院、経口摂取中断の要因となる。誤嚥性肺炎の発症には嚥下機能低下のみならず、咽頭残留や分泌物貯留による不顕性誤嚥の関与が指摘されている。また、分泌物の喀出困難は睡眠障害や活動量低下を招き、全身状態悪化につながる。今回、分泌物貯留が著明で誤嚥性肺炎再発リスクが高い2症例に対し、ジェントルスティムを用いた介入を実施し、分泌物管理および経口摂取状況の改善を認めたため報告する。
【症例1】
91歳男性。HDS-R20点。入院前からミキサー食を摂取していた。転倒による肩関節骨折後に誤嚥性肺炎を発症し胃瘻造設となった。嚥下内視鏡検査では咽頭残留を認めた。退院後当施設へ入所したが経口摂取は困難と判断されていた。入所時は安静時より痰の貯留が著明で頻回に湿性嗄声を認め、夜間も喀痰による覚醒を繰り返していた。MWST2点。嚥下反射は惹起されるものの咽頭残留の自覚に乏しく、排痰能力低下を認めた。
【症例2】
87歳男性。HDS-R21点。入院中の2か月間で3回の誤嚥性肺炎を発症後に当施設へ入所した。入院中は常食を摂取していたとの情報だったが、入所時頻回のむせ込みを認め、全粥きざみとろみ食および濃いとろみ水へ変更した。MWST2点。食事時間は約30分を要していた。安静時より唾液および痰の咽頭残留を認め、湿性嗄声と流延がみられた。夜間は痰の絡みにより睡眠が妨げられ、日中の臥床希望が強く聞かれ、自分自身で痰の喀出も行っていたが吸引を希望することが多かった。
【介入方法】
両症例に対し入所時より実施していた口腔ケアおよび間接訓練(発声訓練、咳嗽訓練、頸部可動域訓練等 1回20分/週3回)は変更せず継続したうえで、ジェントルスティムを週3回、1回20分、1か月間実施した。ジェントルスティムは本人が違和感なく継続可能な刺激強度に設定した。介入期間中は痰貯留、湿性嗄声、むせ込み、流延、夜間症状、食事摂取状況について経時的に観察した。
【結果】
症例1では介入開始後より痰貯留および湿性嗄声の出現頻度が低下した。夜間の喀痰による覚醒も著明に減少し睡眠状況の改善を認めた。経口摂取は段階的に拡大し、胃瘻栄養主体から3食経口摂取が可能となった。食事開始当初は咽頭残留がみられたが、追嚥下を意識的に行うことで安全な摂取が可能となった。日中の喀痰回数も減少し、痰処理のため常時使用していたティッシュの廃棄袋が不要となった。夜間のトイレによる覚醒は継続していたが、痰絡みや唾液貯留による覚醒は消失した。介入終了後も誤嚥性肺炎の再発は認めなかった。
症例2ではむせ込み、湿性嗄声、流延が軽減した。また、夜間の痰貯留は消失し、吸引希望もみられなくなった。良眠が得られるようになり、日中の活動性向上を認めた。食事時間は約30分から15分へ短縮した。食形態は全粥から軟飯へ変更可能となり、飲水時のとろみも濃いとろみから中間のとろみへ調整できた。介入終了後も安定した経口摂取を継続していた。
【考察】
両症例は分泌物貯留および咽頭残留が顕著であり、不顕性誤嚥による誤嚥性肺炎再発の高リスク状態であった。介入後には痰貯留、湿性嗄声、流延など分泌物関連症状の改善とともに、経口摂取状況の改善がみられた。ジェントルスティムは咽頭周囲への感覚入力を高め、嚥下反射を促通するとされている。本症例においても嚥下関連機能の活性化により分泌物クリアランスが向上し、咽頭残留の軽減および不顕性誤嚥リスクの低下につながった可能性が考えられた。また、分泌物貯留の改善は睡眠状態や食事効率の向上にも寄与したと考えられた。特に両症例で夜間症状の軽減や吸引依存の低下を認めたことから、分泌物貯留の改善は利用者の生活の質(QOL)向上にも寄与した可能性が考えられた。一方で、本報告は2症例の経過報告であり、介入前後の嚥下内視鏡検査等による客観的評価を十分に実施できていない。また、口腔ケアや間接訓練、多職種による全身管理の影響も否定できない。今後は客観的指標を用いた検討が必要である。
【結論】
分泌物貯留を伴う誤嚥性肺炎高リスク利用者2例に対しジェントルスティムを用いた介入を実施した結果、分泌物貯留の改善、夜間症状の軽減および経口摂取能力の向上を認めた。ジェントルスティムは、分泌物貯留を伴う利用者の分泌物クリアランスの改善および経口摂取支援に有用である可能性が示唆された。