講演情報

[23-P-F001-03]ドラムサークル活動の実践報告老健デイケアにおける参加意欲と交流促進の可能性

*相良 拓也1、永野 和代1、豊留 裕章2、上田平 美津代1、松永 千賀子1、上堀 いづみ1 (鹿児島県 1. 介護老人保健施設ひまわり、2. 大勝病院)
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【目的】通所リハビリテーションでは、身体機能の維持・向上に加え、利用者の参加意欲、社会交流、生活意欲の向上を支援することが求められている。しかし、集団活動においては利用者の身体機能や認知機能、意欲の違いにより、積極的に参加する者と消極的な者に分かれやすく、全員が主体的に関われる活動の工夫が必要である。当デイケアでは、楽器経験の有無に関わらず誰でも参加でき、正解・不正解が生じにくい活動としてドラムサークルを導入した。ドラムサークルとは、円形に座った参加者全員が打楽器等を用いてリズムを共有・即興演奏する活動であり、音楽療法の分野でも注目されている。本発表では、老健デイケアにおけるドラムサークル活動の実践内容を報告するとともに、利用者の表情、発語、参加意欲、他者交流、身体活動に見られた変化を整理し、その有用性と課題を検討することを目的とした。
【方法】当施設デイケア利用者を対象に、ドラム、ジャンベ、タンバリン、鈴、マラカス、手拍子等を用いたドラムサークル活動を令和8年4月より月1回実施し、2回分の実績をまとめた。活動の流れは、あいさつ・自己紹介、手拍子によるウォーミングアップ、職員のリズム模倣、利用者同士のリズムの掛け合い、全員での合奏、活動後の感想共有とした。評価は、職員による観察記録に加え、第2回活動後にアンケート調査(n=18)を実施した。評価項目は、参加状況、表情、発語、上肢活動、他者交流、活動後の反応、参加満足度、次回参加意向とした。なお、結果の記載にあたっては個人が特定されないよう匿名化に配慮した。
【結果】活動開始前には各自が好きなリズムで楽器を鳴らし始める様子が見られたが、職員の声かけに応じて普段は集団活動に消極的な利用者がサークル内で手拍子から参加する場面や、自ら楽器を手に取りリズムを刻む場面が見られた。また、普段発語の少ない利用者がリズムに合わせて声を出す、活動後に「楽しかった」「またしたい」と自発的に発言するなどの変化も認められた。さらに、隣席者と顔を見合わせて笑う、互いの演奏に拍手を送るなど、利用者同士の自然な交流が随所に生まれた。集団の輪に加わらない利用者も、自席でリズムに合わせて体を動かす場面が確認された。アンケートでは、「とても楽しかった」「まあまあ楽しかった」を合わせた肯定的評価が83.4%(15名/18名)、次回参加意向は18名全員(100%)であった。また、「リズムに乗ったら嫌なことも全て忘れて楽しかった」「太鼓叩きはストレス発散になるので次回もできると良い」「入所中の方に会えて涙が出た」など、情動効果や社会的つながりを当事者自身が言語化したコメントが複数得られた。一方で、後方・車椅子利用者への楽器提供機会の不均等、音量の大きさによる離席者の発生、会場の狭さや換気・通路確保などの課題も確認された。
【考察】ドラムサークル活動は、音を出すという直感的な行為を中心とするため、認知機能や身体機能に差がある利用者でも参加しやすい活動であると考えられた。正解・不正解を意識しにくく失敗への不安が少ないことが、普段活動に消極的な利用者の参加を引き出した可能性がある。同じリズムを共有することで、視線、笑顔、拍手、声かけなどの交流が自然に生まれ、集団活動としての一体感が醸成されやすかったと考えられる。身体面では、楽器を叩く、手拍子をする、姿勢を保つといった動作が自然な上肢活動につながった。参加者自身が「ストレス発散」「嫌なことを忘れられた」と情動効果を言語化している点は、観察者によるアウトカム評価を補完する一次資料として重要であり、QOL向上の間接的指標ともなり得る。次回参加意向100%という結果は、活動継続の客観的根拠として説得力がある。また、参加に関しては、デイケアの全体レクリエーションの中で実施したこと、施設全体で集まっての月行事活動の実績があったことから職員の強力が得られやすかったことも影響したと言える。課題として挙がった後方・車椅子利用者への対応については、楽器の巡回配置やスタッフによる個別補助の仕組み化が必要である。また、音響管理や会場レイアウトの事前設計を行うことで、より包括的な参加環境の整備が可能となる。今後は評価項目を統一し、活動前後の変化を継続的に記録・蓄積することで、ドラムサークル活動の効果をより客観的に検証していく必要がある。
【結論】老健デイケアにおけるドラムサークル活動は、利用者の笑顔、発語、身体活動、他者交流を引き出す可能性があり、アンケートによる高い満足度(肯定的評価83.4%)と全員の次回参加意向(100%)が示されたことから、通所リハビリテーションにおける参加意欲と社会交流を高める集団活動の一つとして有効であると考える。今後は実施上の課題を一つずつ改善しながら継続的な評価を重ね、より質の高い活動の実現と、施設全体への展開を目指していく。