講演情報

[23-P-P201-01]外国人職員へのアンケート調査を通じて得られた課題~日本人職員との認識比較から見えたこと~

*山下 文教、肱岡 和彦、角之上 洋一、新地 翔平、紙屋 里恵子 (鹿児島県 介護老人保健施設ひまわり)
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【背景・目的】当施設(介護老人保健施設ひまわり、入所定員136床、通所リハビリ60名)では、人材不足を背景にインドネシア人6名・ネパール人3名、計9名の外国人介護職員を受け入れている。多文化共生による介護現場づくりが課題となる中、外国人職員の定着・育成においては日本語によるコミュニケーション上の困難が日常的に生じている一方、施設として組織的な実態把握や支援体制の評価は十分でなかった。そこで本研究では、外国人職員および受け入れ側である日本人職員の双方を対象にアンケート調査を実施し、コミュニケーション上の課題と双方が希望する支援内容を明らかにするとともに、両者の認識の一致点・相違点を比較分析することで、今後の具体的な支援策改善に資する基礎資料とすることを目的とした。
【方法】対象は、インドネシア人介護職員6名・ネパール人介護職員3名、計9名(外国人職員調査)、および介護・看護・リハビリ・事務職員等22名(日本人職員調査)とした。外国人職員調査は日本語・現地語(インドネシア語またはネパール語)併記の自記式アンケートを用い、選択式22問・記述式5問で構成した(回収率100%)。日本人職員調査は選択式18問・記述式6問の自記式アンケートとした。調査項目は、日常的な意思疎通の状況、業務指導・申し送りにおける情報伝達、職場内の関係性・多様性への配慮、希望する支援内容、総合満足度等とした。回答は任意・無記名とし、得られたデータは個人が特定されない形で集計・分析した。
【結果】外国人職員は9名全員が「今後も日本で介護職として働き続けたい」「当施設を友人・知人に推薦したい」と回答し、総合満足度の平均は1.67点(5段階中、数値が低いほど良好)と高い水準を示した。一方、国籍別の特徴として、インドネシア人職員は自身の意思を日本語で発信することへの困難(発信面の課題)を、ネパール人職員は申し送りや会議など他者の発話を聞き取り理解することへの困難(受信面の課題)を、それぞれより強く感じている傾向が認められた。希望する支援内容としては、「日本語サポートの強化」と「キャリアアップの機会の提供」の2項目が9名全員一致で最上位に挙げられ、次いで「多言語マニュアルの整備」「相談窓口の設置」「文化・宗教への配慮」も多くの職員から求められた。
日本人職員調査では、「業務指示の内容を確認している」(平均1.59)、「外国人職員と意思疎通ができている」(平均1.64)、「今後も外国人職員と働き続けたい」(平均1.72)、「外国人職員との関係は良好」(平均1.86)といった項目は良好な評価であった一方、「申し送りや会議の内容が外国人職員に伝わっている」という項目は平均2.68(4段階中)と最も低いスコアにとどまり、情報伝達面の課題が浮き彫りとなった。また「外国人職員の成長・スキルアップを支援できている」(平均2.45)、「外国人職員が日本人と同等に評価されている」(平均2.45)、「適切にフィードバックを伝えられている」(平均2.36)も相対的に低いスコアであった。希望する支援としては「日本語支援ツールの導入」が22名中11名と最多であり、次いで「情報共有の強化」(9名)「多言語マニュアル・相談窓口の設置」(各8名)が挙げられた。自由記述では「どこまで理解しているか分からず不安」「外国人職員の受け入れが現場任せになっている」「2期・3期の受け入れでは1期目ほど手厚いサポートができていない」といった、施設全体としての体制整備を求める意見が複数挙げられた一方、「日本語を学びながら一生懸命取り組む姿に刺激を受ける」「職場の雰囲気が明るくなった」など、協働を肯定的に捉える記述も多数みられた。
【考察】本調査の結果、外国人職員・日本人職員の双方が「日本語コミュニケーション支援の強化」を最優先課題として共通して認識していることが明らかとなった。特に申し送り等の情報伝達場面については、外国人職員側は「内容の理解が難しい」、日本人職員側は「内容が伝わっているか把握しづらい」と、双方が同一の場面に課題を感じており、申し送り内容の視覚化・簡略化・多言語化など、双方向からのアプローチが有効と考えられる。また、外国人職員はキャリアアップへの意欲が高い一方、日本人職員側からは成長支援や評価に関する自信のなさがうかがえ、評価基準の明確化や管理者を含めた組織的な育成体制の構築が今後の重要な課題として示唆された。さらに、受け入れが現場任せになっているという指摘は、外国人材の定着支援が一部の担当者の努力に依存している現状を示しており、施設全体での体制整備の必要性を裏付けるものといえる。
【今後の対応】以上の結果を踏まえ、当施設では①日本語学習会・個別面談の実施や業務マニュアルの多言語化等による日本語支援の強化、②外国人職員担当のメンター配置や申し送り内容の書面化・視覚化等による相談・情報共有体制の整備、③資格取得支援やステップアップ評価基準の明示、管理者が関与する受け入れ研修の整備等によるキャリア支援・定着促進、の3点を柱とした取り組みを組織的に推進していく方針である。また、これまで介護主任が外国人職員と個別面談を行った際の内容と今回のアンケート結果で差が見られる点もあるため、個別面談を継続する中でアンケートとの相違点を比較・研究することとした。今後も、外国人・日本人双方の職員が安心して協働できる体制づくりを通じて、外国人職員の定着促進と質の高いチームケアの実現を目指したい。