講演情報
[23-P-P2Q-02]外国籍職員の育成とキャリアアップ支援の実態分析~教育研修室の取り組みを通じて~
*中川 美佐子 (埼玉県 介護老人保健施設さんとめ)
Ⅰ.はじめに
A施設では2017年から技能実習生の受け入れを始め、今では特定技能実習生や留学生の新入職員を迎え18名(介護以外も含む)の外国籍職員が活躍している。育成は主にOJT教育で行われていたが、現場は余裕のある体勢ではないため計画的な育成が行えていなかった。そこで、職員がそれぞれ役割を果たし力が発揮できるよう、2024年に職員育成を目的に教育研修室が設置された。外国籍職員への面談やアンケートを通じ、支援内容やキャリアアップ支援のニーズを明らかにした結果をここに報告する。
Ⅱ.目的
1.外国籍職員が安心して働ける仕組みを作る
2.外国籍職員が職場に求める支援を明確にする
Ⅲ.取り組み
①外国籍職員にも日本人職員と同じように、指導者(プリセプター)制度等を活用し、現場でのOJT教育や学習会などのOff-JT教育を行う。また、定期面談を一人ひとり行い、その内容を部門責任者・管理者にフィードバックする。
②毎月、特定技能実習生を対象に学習会を開催する。特定技能職員が講師を担い、調べる力・まとめる力・伝える力を養うことを目的とする。法人内で働く他事業所の特定技能実習生との交流や事業所見学も実施し、法人理解やキャリアアップに繋げる。
③介護職として働く外国籍職員13名を対象に、アンケートを実施する。質問項目は以下の通り。年齢,在留資格,日本に来てからの期間,今後も当施設で働き続けたいか,働き続けたい理由,今の職場で不安なこと,現在受けている支援,受けている支援に満足しているか,どのような支援があればより働きやすいか,キャリアアップの目標,資格取得に向けた勉強をしているか,資格取得で困っていること,困ったときに相談しやすいか,もっと充実して欲しい支援,長く働くために必要だと思うこと,意見や伝えたいこと
Ⅳ.倫理的配慮として、本調査は対象者に研究目的と不利益を被らない旨を事前に説明し、同意を得て実施した。結果はすべて統計的に処理し、個人や組織が特定されないよう匿名化に万全の配慮を講じた。
Ⅴ.結果
①現場でのOJT教育以外にも学習会や研修参加などのOff-JT教育を行うことで、根拠に基づいたケアが少しずつ提供されるようになってきた。それを後輩指導にも役立てることができている。面談では生活面での課題が明らかになった際は支援機関や事業所管理部にフィードバックを行うことで、迅速に対応することができた。他にも介護福祉士取得のための支援では、法人としてオンライン授業を開講し、事業所ではそのフォローを行った。結果、昨年度は3名が国家試験に合格することができた。
②他事業所との交流は、外国籍職員の少ない事業所で働く特定技能の職員にとって、有効な交流の場となった。法人内の他事業所の見学をすることで、介護職として活躍する場を知ることができ、専門職としての視野やキャリアアップの選択肢を広げることができた。
③回答結果では、全体の約9割以上が継続勤務を希望しており、外国籍介護職員の多くは現在の職場に対して前向きな意識を持っていることが示された。継続勤務を希望する理由として、「人間関係が良い」「仕事が好き」「日本で長く働きたい」といった回答が多くみられた。一方で、職場で不安に感じていることとして最も多かったのは「日本語」で、13名中10名が回答していた。次いで、「給与・生活費」6名、「仕事内容」「キャリアの見通し」それぞれ4名であった。自由記述では、介護専門用語や利用者とのコミュニケーション、会議での日本語理解などへの不安も挙げられていた。現在受けている支援については、「満足」10名、「とても満足」2名であり、多くの職員が施設の支援体制を肯定的に評価していた。また、今後さらに充実を希望する支援としては、「日本語学習の時間確保」が最も多く、次いで「資格取得費用の補助」「試験対策」「生活面の相談」が挙げられた。
Ⅵ.考察
給与や福利厚生だけではなく、職場の人間関係や働きやすい雰囲気が職場定着に大きく影響していることが考えられる。外国籍介護職員にとって安心して相談できる職場環境は、就労継続の重要な要因である。また、日本語能力は日常業務だけでなく、資格取得やキャリア形成にも大きく影響していることが伺えた。現在の支援体制は一定の評価を得ているものの、資格取得や日本語学習を支援する制度については、さらに充実が期待されていることが分かった。日本語の難しさや学習時間の確保などが課題として挙げられており、学習環境の整備が必要であることが示唆された。
今回の結果から、外国籍介護職員の職場定着には、良好な人間関係や相談しやすい環境に加え、日本語学習支援、資格取得支援、キャリア形成支援を継続的に行うことが重要であると考えられる。
Ⅶ.結論
今回の回答より職場での継続的な勤務意欲が伺えた一方で、日本語学習支援においての課題も明らかになった。職員育成は、質の高いケアの提供や継続的な事業運営のためにも重要な課題の一つである。また、介護は利用者一人ひとりに寄り添い、自立支援を実現するための支援である。介護技術だけではなく、日本語学習支援が継続的に行われていくことが必須の課題であり、それが結果的に今後の外国籍職員のキャリアアップやケアの質の向上に繋がることが期待される。
【参考文献】
・厚生労働省 「外国人介護人材確保に関する最新の政策動向」(2025) https://www.nttdata-
strategy.com/assets/gaikokukaigojinzai/doc01.pdf(2026.6.25アクセス)
・中嶋裕子(2021).「外国人介護人材受け入れについての課題と展望」『社会事業研究』60号,pp7-18
・亀山順子 柳久子(2019).「外国人介護職者における就労意向・バーンアウトおよびコミュニケーション能力の特徴に関する研究」『日本公衆衛雑誌』第66巻,1号,pp38-47
A施設では2017年から技能実習生の受け入れを始め、今では特定技能実習生や留学生の新入職員を迎え18名(介護以外も含む)の外国籍職員が活躍している。育成は主にOJT教育で行われていたが、現場は余裕のある体勢ではないため計画的な育成が行えていなかった。そこで、職員がそれぞれ役割を果たし力が発揮できるよう、2024年に職員育成を目的に教育研修室が設置された。外国籍職員への面談やアンケートを通じ、支援内容やキャリアアップ支援のニーズを明らかにした結果をここに報告する。
Ⅱ.目的
1.外国籍職員が安心して働ける仕組みを作る
2.外国籍職員が職場に求める支援を明確にする
Ⅲ.取り組み
①外国籍職員にも日本人職員と同じように、指導者(プリセプター)制度等を活用し、現場でのOJT教育や学習会などのOff-JT教育を行う。また、定期面談を一人ひとり行い、その内容を部門責任者・管理者にフィードバックする。
②毎月、特定技能実習生を対象に学習会を開催する。特定技能職員が講師を担い、調べる力・まとめる力・伝える力を養うことを目的とする。法人内で働く他事業所の特定技能実習生との交流や事業所見学も実施し、法人理解やキャリアアップに繋げる。
③介護職として働く外国籍職員13名を対象に、アンケートを実施する。質問項目は以下の通り。年齢,在留資格,日本に来てからの期間,今後も当施設で働き続けたいか,働き続けたい理由,今の職場で不安なこと,現在受けている支援,受けている支援に満足しているか,どのような支援があればより働きやすいか,キャリアアップの目標,資格取得に向けた勉強をしているか,資格取得で困っていること,困ったときに相談しやすいか,もっと充実して欲しい支援,長く働くために必要だと思うこと,意見や伝えたいこと
Ⅳ.倫理的配慮として、本調査は対象者に研究目的と不利益を被らない旨を事前に説明し、同意を得て実施した。結果はすべて統計的に処理し、個人や組織が特定されないよう匿名化に万全の配慮を講じた。
Ⅴ.結果
①現場でのOJT教育以外にも学習会や研修参加などのOff-JT教育を行うことで、根拠に基づいたケアが少しずつ提供されるようになってきた。それを後輩指導にも役立てることができている。面談では生活面での課題が明らかになった際は支援機関や事業所管理部にフィードバックを行うことで、迅速に対応することができた。他にも介護福祉士取得のための支援では、法人としてオンライン授業を開講し、事業所ではそのフォローを行った。結果、昨年度は3名が国家試験に合格することができた。
②他事業所との交流は、外国籍職員の少ない事業所で働く特定技能の職員にとって、有効な交流の場となった。法人内の他事業所の見学をすることで、介護職として活躍する場を知ることができ、専門職としての視野やキャリアアップの選択肢を広げることができた。
③回答結果では、全体の約9割以上が継続勤務を希望しており、外国籍介護職員の多くは現在の職場に対して前向きな意識を持っていることが示された。継続勤務を希望する理由として、「人間関係が良い」「仕事が好き」「日本で長く働きたい」といった回答が多くみられた。一方で、職場で不安に感じていることとして最も多かったのは「日本語」で、13名中10名が回答していた。次いで、「給与・生活費」6名、「仕事内容」「キャリアの見通し」それぞれ4名であった。自由記述では、介護専門用語や利用者とのコミュニケーション、会議での日本語理解などへの不安も挙げられていた。現在受けている支援については、「満足」10名、「とても満足」2名であり、多くの職員が施設の支援体制を肯定的に評価していた。また、今後さらに充実を希望する支援としては、「日本語学習の時間確保」が最も多く、次いで「資格取得費用の補助」「試験対策」「生活面の相談」が挙げられた。
Ⅵ.考察
給与や福利厚生だけではなく、職場の人間関係や働きやすい雰囲気が職場定着に大きく影響していることが考えられる。外国籍介護職員にとって安心して相談できる職場環境は、就労継続の重要な要因である。また、日本語能力は日常業務だけでなく、資格取得やキャリア形成にも大きく影響していることが伺えた。現在の支援体制は一定の評価を得ているものの、資格取得や日本語学習を支援する制度については、さらに充実が期待されていることが分かった。日本語の難しさや学習時間の確保などが課題として挙げられており、学習環境の整備が必要であることが示唆された。
今回の結果から、外国籍介護職員の職場定着には、良好な人間関係や相談しやすい環境に加え、日本語学習支援、資格取得支援、キャリア形成支援を継続的に行うことが重要であると考えられる。
Ⅶ.結論
今回の回答より職場での継続的な勤務意欲が伺えた一方で、日本語学習支援においての課題も明らかになった。職員育成は、質の高いケアの提供や継続的な事業運営のためにも重要な課題の一つである。また、介護は利用者一人ひとりに寄り添い、自立支援を実現するための支援である。介護技術だけではなく、日本語学習支援が継続的に行われていくことが必須の課題であり、それが結果的に今後の外国籍職員のキャリアアップやケアの質の向上に繋がることが期待される。
【参考文献】
・厚生労働省 「外国人介護人材確保に関する最新の政策動向」(2025) https://www.nttdata-
strategy.com/assets/gaikokukaigojinzai/doc01.pdf(2026.6.25アクセス)
・中嶋裕子(2021).「外国人介護人材受け入れについての課題と展望」『社会事業研究』60号,pp7-18
・亀山順子 柳久子(2019).「外国人介護職者における就労意向・バーンアウトおよびコミュニケーション能力の特徴に関する研究」『日本公衆衛雑誌』第66巻,1号,pp38-47
