講演情報

[22-O-L006-07]創部保護と歩行再獲得を両立した在宅復帰支援

*椎名 将史、吉川 尚樹 (千葉県 介護老人保健施設シルバーケアセンター)
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【目的】
関節リウマチに伴う足部変形を背景とした足部潰瘍患者では創部保護と活動性維持の両立が課題となる。特に切断を回避し下肢温存を選択した症例では、創部管理だけでなく生活動作における免荷の継続が重要である。今回、本人の希望により下肢温存となった難治性足部潰瘍患者に対し、入所前訪問指導、装具調整、免荷指導および退所前訪問指導を実施し、創部悪化なく在宅復帰に至った症例を経験したため報告する。
【症例紹介】
右踵部胼胝下潰瘍および右踵骨骨髄炎により、骨髄炎の再燃を繰り返し急性期病院へ入院となった80歳代女性。入院時、踵骨には骨破壊を伴う骨髄炎を認め、下腿切断も考慮されていたが、本人の希望により下肢温存の治療となった。
入院後、露出している踵骨のデブリードマン、抗生剤治療、陰圧局所療法を施行し、肉芽形成後に分層植皮術を施行された。その後歩行訓練を開始し、創部悪化を認めず、身体機能改善および在宅復帰を目的に当施設へ入所となった。
【生活状況】
独居生活で要介護2、訪問看護を週3回利用し、近隣に住む家族の援助を受けながら自立した生活をしていた。自宅内はサークル歩行器使用し移動、リウマチによる足部変形と潰瘍部の免荷のため両下肢には短下肢装具を使用していた。
【入所時評価、家屋状況】
入所時評価はBarthel Index(以下BI)55点。施設内は車椅子レベルで軽介助。排泄も昼夜トイレ使用し軽介助であった。身体機能面ではShort Physical Performance Battery(以下SPPB)2点、6分間歩行はサークル歩行器使用し126m、認知機能問題なし。創部に関しては看護師が毎日イソジンシュガーパスタで処置しデルマエイドにて保護していた。入浴も週2回シャワー浴を行っていた。 
自宅内は車椅子でも移動可能な環境であったが、食卓への移動は車椅子では困難であり、手指の変形もあることから車椅子駆動ではなく歩行での移動を選択していた。
【入所時課題】
創部保護のため短下肢装具を使用していたが、歩行能力低下により車椅子主体の生活となっていた。入所後訪問の状況から在宅復帰には創部の悪化を防ぎながら自立歩行の獲得が必須であった。
【介入1:運動療法による負荷量の漸増と歩行距離の段階的拡大】
当施設でのリハビリテーションはサークル歩行器を使用し、歩行距離を段階的に拡大しながら歩行訓練中心の介入を行った。個別リハビリとは別に当施設で実施している集団起立訓練にも参加し、下肢筋力向上を図った。
【介入2:看護師との創部確認、義肢装具士との装具調整】
創部に関してはリハビリ介入前後や看護師処置の際に適宜確認をした。また、系列病院の形成外科へ月1回程度受診し創部状態の確認がされていた。創傷管理および装具調整を目的としたフットケア外来の受診時は同席し、施設での状況報告や看護師と創部の確認、義肢装具士と短下肢装具での創部の除圧免荷調整を実施した。両短下肢装具に関しては施設内でも行える除圧調整や注意点について義肢装具士から指導を受け、適宜修正を行った。
【介入3:在宅復帰に向けた多職種との情報共有、生活指導】
入所日、入所30日、入所63日には多職種カンファレンスを実施し、創部状況、身体機能、在宅復帰に向けた課題を共有した。入所後84日で本人、家族、ケアマネージャー、訪問介護事業所介護士、リハビリスタッフにて退所前訪問を実施し、自宅内動作を確認、多職種カンファレンスを行った。入所中は歩行も自立レベルであったが、歩行での施設生活が過負荷になることを懸念し車椅子中心での生活を行っていた。一方、リハビリでは歩行距離を拡大し、在宅復帰後は入所中以上の負荷はかけないよう指導した。また、生活範囲に関しては、訪問スタッフとも創部の悪化がないことを確認しながら段階的に拡大する方針を共有した。
【結果】
BI85点に改善し施設内生活は車椅子中心で自立し、排泄も昼夜トイレ使用で自立となった。施設内生活は車椅子であったが、サークル歩行器での歩行が自立レベルとなり、入院前動作レベルまで改善を認めた。SPPB5点、6分間歩行はサークル歩行器使用し161mに改善した。創部に関しても改善を認めワセリン塗布のみの処置に変更となり、退所後は訪問介護、家族で対応可能となった。 
退所前訪問時にはこれまでの経過、現状身体機能、家庭生活での創部悪化リスクを本人、家族、多職種と情報共有実施し、自宅退所可能な判断となった。
【考察】
本症例は入所前より関節リウマチに伴う足部変形から慢性的な潰瘍形成、骨髄炎を認め、創部改善と悪化を繰り返していた。足部潰瘍症例では創部保護のため活動制限が必要となる一方、過度な活動制限は身体機能低下につながる可能性がある。
本症例では看護師と創部状態の継続的確認および義肢装具士と連携した装具調整を行ったことで、創部保護と歩行能力向上の両立につながった可能性がある。
また、入所前訪問により本人の生活背景や住宅環境を把握し、退所前訪問では家族、ケアマネージャー、訪問介護事業所介護士へ動作方法や生活上の注意点を共有したことで、獲得した動作能力を在宅生活へつなげる支援体制を構築できた。その結果、創傷管理中心の支援から生活支援中心の在宅サービスへ移行し、家族及び訪問介護による支援体制のもと、在宅生活を継続できる環境を整えることができたと考えられる。
【結論】
関節リウマチに伴う足部変形を背景とした足部潰瘍患者に対し、入所前後訪問指導、装具調整および創部管理を中心とした多職種連携を実施した結果、創部悪化を予防しながら歩行能力を再獲得し在宅復帰に至った。老健における在宅復帰支援では生活環境や疾患管理を踏まえた継続的な介入が重要である。