講演情報

[22-P-L002-01]デイケア利用者への「座位ブレイク」の取り組み―健康意識と行動変容に関する調査―

*平山 陽太、佐藤 莉緒、大根澤 美保子、渡邉 麻美、一ノ瀬 直子 (新潟県 介護老人保健施設 関川愛広苑)
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【はじめに】
近年,長時間の座位行動(座り過ぎ)は生活習慣病や身体機能低下,死亡リスク増加など健康への悪影響が報告されている.特に高齢者は身体活動量低下と座位時間増加がみられ,要介護リスクとの関連が指摘されている.また,近年では運動のみならず長く座り続けないこと(座位中断)の重要性が注目され,「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも座位行動の中断が推奨されている.
当デイケアでは座位行動予防のため令和7年11月に座位中断に関するミニ勉強会を利用者に対し実施した.利用者に分かりやすく伝わるよう,座位中断の活動を「座位ブレイク」と称し,その後も定期的な声掛けにより姿勢変換や立位保持,軽運動を利用時間内に促している.
本研究では,この「座位ブレイク」の取り組みが利用者の健康意識や生活行動に与えた変化を明らかにすることを目的としアンケート調査を実施したため,以下に報告する.
【対象と方法】
対象は,昨年11月の勉強会参加者で継続利用中の73名のうち,同意が得られなかった者や認知機能低下等により調査困難な者を除く60名とした.
調査は5件法の選択式および自由記載式アンケートを用い,匿名による自記式または面接式で実施した.項目は(1)性別,(2)年齢,(3)座位中断に対する活動前の認知度,(4)「座位ブレイク」の取り組みに対する評価,(5)自宅での実施状況,(6)取り組み前後での身体状況の変化,(7)「座位ブレイク」の取り組みの継続意欲,(8)行動変容内容の8項目とした.回答4・5を肯定的回答,「どちらともいえない」を含む1~3を非肯定的回答として割合を算出した.自由記載は内容分析を行い分類した.
【結果】
対象60名のうち(1)性別は男性25名(42%),女性35名(58%),(2)年齢は80代以上が42名(70%)であった.(3)座位中断に関しての勉強会前の認知度は「知らなかった」が43名(72%)であった.(4)「座位ブレイク」の取り組みに良い活動であると46名(77%)が答えた.(5)自宅での実施は29名(48%),(6)身体状況の改善を実感したのは27名(45%)だった.(7)「座位ブレイク」の活動について,今後も継続したいと意欲を示したのは46名(77%)であった.(8)実際の行動変容では,テレビCM中の軽い体操やストレッチ,立ち上がり,テレビ体操の活用,散歩などの記載があった.
また,(5)自宅非実施群31名(52%)のうち,(8)自由記載で,「独居のため日常的に動いているから」や「家事や農作業を行っているため意識していない」「常に動いているから」などの回答もみられた.
【考察】
本研究では,当デイケアにおける「座位ブレイク」の取り組みが利用者の健康意識や生活行動に与える影響を調査した.その結果,取り組み開始前は43名(72%)が座位中断について知らなかったが,勉強会後は「座位ブレイク」の活動に対し46名(77%)が肯定的であった.さらに,「座位ブレイク」の取り組みに対し,46名(77%)が継続に意欲的であったことから,当苑で実施している「座位ブレイク」の取り組みは利用者に概ね好意的に受け取られたものと考えられる.
「座位ブレイク」の自宅実施については全体の29名(48%)に認めた.自由記載では,テレビ体操の活用や定期的な軽体操の実践,散歩など日常生活の運動の定着が認められた.これは,Prochaskらの行動変容ステージモデル1)の「無関心期」に対し,ミニ勉強会や広報誌,継続的な声掛けにより重要性が理解され,「関心期」~「実行期」へ移行したものと考える.さらに,27名(45%)が身体状況の改善を実感しており,座位中断を実行したことによる効果を認識し,これが自己効力感を高め,座位中断の行動継続を促す内的フィードバックとして機能し,「実行期」~「維持期」へ移行したと考えられる.
一方で,自宅非実施群31名(52%)のうち,「独居のため日常的に動いている」「家事や農作業のため意識していない」などの回答がみられた.この結果から,あえて座位中断を意識せずとも,日頃の家事や農作業等により,座位中断の目的である日常生活上の有効な身体活動量がすでに維持している利用者がいることが明らかになった.以上から,座位中断を推進しその効果を実感してもらうには,利用者個々のライフスタイルや意欲,活動目的などを踏まえた上での助言や指導が必要であると考えられる.
本研究の限界として,匿名によるアンケート調査のため,各利用者の身体機能評価や身体活動量などの客観的指標と関連付けられていない.また,身体状況の変化も他の要因を除外できず直接的な因果関係を明らかにすることはできていない.今後は客観的測定を併用しつつ,定期的な実施状況の確認と適切なフィードバックを検討し,座位中断の促進と継続,活動の効果検証を行いたい.
【結論】
当デイケアにおける「座位ブレイク」の取り組みは,利用者の座位中断に対する理解を深め,一部利用者において在宅生活での行動変容につながった.今後は利用者全体への声掛けから利用者個々のライフスタイルに応じた助言や指導が重要である.
【倫理的配慮】
本研究は個人情報保護に配慮し,対象者および家族に説明の上,同意を得て実施した.
【参考文献】
1)Prochaska J.O., Velicer W.F.The transtheoretical model of health behavior change.American Journal of Health Promotion 12(1), p38-48, 1997.