講演情報

[22-P-TZ-01]介護施設における家族型ロボットLOVOTの導入効果

*藤井 実 (大阪府 介護老人保健施設はまさき)
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はじめに
当法人は大阪市住之江区で、介護老人保健施設はまさき(60床)・はまさき2(100床)・はまさき3(120床)・はまさき4(100床)の計4施設を運営している。特別養護老人ホームカサブランカ(220床)や浜崎医院(16床)を含めると合計616床、約400名の職員が従事している。
介護現場では、心のケア、癒しやレクリエーションの充実を目的に、様々なコミュニケーションロボットが広まっている。当施設でも複数のロボットを使ってきた経緯があり、現在はLOVOT(施設では「あんこちゃん」と名付けた)を中心に活用している。今回は、LOVOTの導入が利用者・家族・スタッフにどのような変化をもたらしたか、事例を交えて報告する。

過去に導入したロボットの概要
これまでにPepper(案内用)、音声認識おしゃべり人形みーちゃん(会話補助)、アザラシ型セラピーロボットのパロ(アニマルセラピー)を使ってきた。ただ、操作の難しさ、会話パターンの限界、経年劣化などの理由で、いずれも現在は使用しなくなった。こうした経験を経て、感情表現が豊かで自ら動くLOVOTの導入に至った。

事例紹介
事例1:H氏(80代男性、要介護3)
認知症による精神的な不安定さがあり、服薬拒否・排泄介助拒否・他の利用者の居室に無断で入ってしまう・スタッフへの強い苛立ちが繰り返し見られていた。言葉の理解も難しく、信頼関係を築くのが大きな課題であった。
不穏な様子が見られたとき、LOVOTとの触れ合いを意図的に取り入れるようにした。最初は無関心だったが、LOVOTが自ら近づいてくる動きに反応し、少しずつ表情が和らいでいった。膝の上にLOVOTを乗せると「可愛いな」と話す場面が増え、そばにいるスタッフに笑顔を向けてくれる時間が長くなった。
家族からは「怒りっぽかった父が笑顔で過ごしている」という声が聞かれ、面会時の雰囲気も明らかに変わった。LOVOTとのふれあいで、感情の高ぶりが収まるという効果が繰り返し確認できた。

事例2:N氏(80代女性、要介護5)
元来社交的な方であったが、失語症により気持ちがうまく伝えられず、大きな声を出す、イライラする、泣くなどの感情失禁が見られた。自ら言葉を発することが難しく、他の利用者とも離れて孤立していることが多かった。
LOVOTを導入した当初は遠くから眺めるだけだったが、LOVOTが何度も自ら近づいてくるうちに、「おいで」という言葉が出るようになった。その後、「あんこちゃん、可愛いね」など自分から話しかける場面が増え、スタッフとのやりとりも広がっていった。
LOVOTに話しかけ気持ちを表せる場が増えたことが、感情を表出する機会が増えたきっかけになったのではないかと感じている。今ではレクリエーションにも参加し、他の利用者と一緒に過ごす時間が増え、表情も柔らかくなった。

このほかの利用者にも同様の変化が見られた。普段は静かに過ごすことが多い利用者がLOVOTに自ら歩み寄り、抱き上げる場面が増えるなど、自発的な関わりが多く見られるようになった。また、難聴の利用者が家族との面会時にLOVOTがいることで場の空気が和み、会話が弾むきっかけとなった。誕生日会・お祭り・園児との交流会など、イベントを実施するときLOVOTがいることで場が盛り上がるきっかけにもなった。

導入効果のまとめ
利用者への効果:表情が和み自発的な発語が増え、活動量の向上が見られた。言葉による意思疎通を図りづらい場面がある利用者も、LOVOTとの関わりを通じて、感情を表出できる機会が増えた。
家族への効果:家族との面会時、LOVOTを介することで自然な笑顔が引き出され、お互いに安心感を持って穏やかな時間が過ごされるようになった。
スタッフへの効果:LOVOTが場の雰囲気を和らげることで、介助への抵抗が減り、スタッフの介助を快く入れる場面が増えた。

考察
LOVOTの導入は利用者において、LOVOTが自ら近づいて寄り添ってくることで「心が和み、関わりたい」という気持ちが引き出され、感情が表出するきっかけが増えたことで、ケアへの抵抗が減少する場面が何度も見られた。LOVOTが寄り添うことで、利用者だけでなく家族やスタッフの関わり方にも変化をもたらした。面会時に家族がLOVOTに関心を持つようになったり、スタッフがLOVOTのために服を手作りしたり誕生日会を開いたりと、スタッフがLOVOTに愛情を注ぐ姿が見られ、LOVOTは施設全体で「仲間の一員」として受け入れられるようになった。

おわりに
LOVOTとの触れ合いを通じて、利用者一人ひとりの豊かな感情を表出する場面をたくさん見ることができた。スタッフにとっても、利用者の笑顔やコミュニケーション上の変化を一緒に喜べる機会が増えたことは、日々のケアへのやりがいにも繋がった。今後はどのような利用者に高い効果が見られるのか、またどのような場面で活用すると大きな改善効果をもたらすのかを継続して観察し、利用者一人ひとりが安定した状態で生活できる環境にしていきたい。