講演情報

[22-O-D003-07]利用者の笑顔は職員の写し鏡~多職種による統一ケア実践~

*山口 芽生 (静岡県 介護老人保健施設 静岡徳洲苑)
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【はじめに】
 利用者の笑顔や安心した表情は、日々関わる職員の姿勢や態度を映し出す写し鏡である。当施設認知棟では、ケアを対応する職員によって利用者の不穏症状の程度に差がみられていた。また、不穏症状が強い日ほどインシデント・アクシデントの発生頻度が高いことに着目した。職員による不穏症状の差は、認知症ケアの質にばらつきが生じていることを示している。この課題を改善し、より質の高い認知症ケアを提供するためには、多職種による専門的視点を活用した認知症チームケアと業務改善が必要と考えた。そこで教育担当看護師としてマネジメント介入を行った。
 本報告では、多職種連携によるケアの統一と業務改善を実施した結果、利用者の不穏症状、職員の心理的負担、施設全体のリスク管理において得られた成果を報告する。
【方法】
 利用者・職員・環境の3つの視点から現状分析を行い、課題を抽出した。利用者視点では、令和5年度より活用している認知症チームケアの指標である、BPSD+Q/BPSD25Qおよびタイムスタディを用いて分析した。職員視点では介護職員へのアンケートとタイムスタディを実施し分析した。環境視点ではインシデント・アクシデント発生状況を集計し分析した。
【分析結果】
 介護経験、価値観、性格、業務優先順位に対する考え方の違いにより、認知症ケアの質に職員間で格差が生じていることが明らかとなった。実際にある職員がケア対応する日には、多くの利用者が眠前薬投与時間までに穏やかに入眠し、夜間も安定していた。一方別の職員がケア対応する日には、帰宅願望や興奮などの不穏症状が複数の利用者にみられ、入眠困難や中途覚醒が生じる傾向が認められた。介護職員へのアンケートでは、転倒リスクの高い利用者が多い中、「事故を起こしてはいけないが、業務も進めなければならない」という葛藤があり、業務遂行への焦りや緊張感が態度や言動に表出していることが分かった。その結果、利用者の不安や不穏症状を助長している可能性が示唆された。
 以上のことより認知症ケアに関する知識教育のみならず、職員の心理的負担軽減を含めた業務改善が必要であると判断した。
【教育・業務改善内容】
①認知症ケア、高齢者虐待、不適切ケアに関する定期勉強会の開催
②認知症チームケアに関する勉強会および周知活動の実施
③適切な優先順位判断を目的とした事例検討会の開催
④インシデント・アクシデント発生状況を多職種で分析し、必要に応じて介護業務のタイムスケジュールやマニュアルを見直し、多職種応援体制を整備
⑤認知症チームケアに関する多職種カンファレンスを実施し、各専門職の視点からBPSD、特に不穏症状をアセスメントしてケア内容の統一を図った
⑥計画、実践、評価、修正を継続的に実施し、不穏症状が強い利用者についてはカンファレンス頻度を増やすことで、より専門性の高いケア提供に努めた
⑦タイムスタディ結果を基に、レクリエーション支援や見守り業務を多職種で分担し、職員の休憩時間の確保と心理的余裕の創出を図った
【結果】
 利用者に対する調査では、不穏症状を有していた利用者のBPSD+Q/BPSD25Qが多くの事例で改善し、悪化例は認められなかった。また、入所時に定期眠前薬が処方されていた利用者の82%が、定期眠前薬を使用せずに良好な睡眠を得られるようになった。職員に対する調査では、アンケートにおいて全職員が心理的・身体的負担の軽減を実感することとなった。環境面においては、インシデント・アクシデント発生件数が前年度と比較して減少するといった結果となった。
【考察】
 認知症ケアの質を確保するためには、専門性の高い継続教育が重要である。また、多職種による専門的視点でのアセスメントとケア計画の共有は、ケアの統一と専門性向上に不可欠であることが示唆された。さらに統一した質の高い認知症ケアの提供と職員の心理的負担軽減を目的とした業務改善が、不穏症状の軽減および介護職員の心理的・身体的負担軽減につながったと考える。
【まとめ】
 認知症高齢者の介護においてストレスを完全に無くすことは難しい。しかし、利用者は職員の姿勢や関わり方を映し出す写し鏡である。今後も継続的な状況把握と業務改善を通じて、利用者と職員双方の笑顔につながる認知症ケアを実践していきたい。