講演情報
[22-P-P101-05]ベッドコントロール改革への挑戦~施設全体で取り組む標準化と多職種連携~
*山下 智子 (鳥取県 介護老人保健施設ゆうとぴあ)
1.はじめに
介護老人保健施設では、利用者の状態変化に応じた迅速な入退所調整を行い、地域における限られた介護資源であるベッドを有効活用することが求められる。当施設は鳥取県西部に位置する入所定員89床(うちショートステイ1床、空床利用)の超強化型介護老人保健施設であり、隣接する透析クリニックとの連携により、透析患者を含む医療的ニーズの高い利用者の受入れにも対応している。しかし、ベッドコントロールが属人化していたため、急な退所への対応や入退所調整が遅れ、2024年度の平均稼働率は91.4%と低迷していた。そこで、管理者と支援相談員を中心にベッドコントロール体制を見直し、業務改善に取り組んだ。
2.現状と課題
従来は管理者と相談室リーダーが中心となり、紙媒体を用いてベッドコントロールを行っていた。週1回のベッドコントロール会議以外では、それぞれの担当者が個別に入退所調整を進めており、施設全体の入退所予定や調整状況を俯瞰して把握できる体制ではなかった。その結果、入院や死亡による急な退所への対応が遅れ、空床が長期化していた。また、退所予定日の決定が遅く、入所依頼に対して受入時期を明確に回答できない状況もみられた。さらに、相談室内でも施設全体を意識したベッドコントロールではなく担当利用者ごとの調整になりやすく、現場職員も稼働率を自分事として捉えにくい状況であった。
3.方法
これらの課題を改善するため、管理者と支援相談員を中心にベッドコントロール体制を見直し、相談室職員全員が主体的に関わる体制へ変更した。具体的な取り組みとして、以下を実施した。
① 情報の可視化:Excelによるベッドコントロール表を作成し、全居室の入退所予定および調整状況を一覧化した。
② 情報共有の強化:毎日ベッドコントロールミーティングを開催し、空床状況、入退所調整、稼働率予測、在宅復帰率、回転率などを共有した。
③ 運用ルールの標準化:入所依頼への迅速な回答、施設医による受入可否の事前確認、退所日の早期決定(原則2週間前)、家族都合による入所遅延を防ぐための施設送迎など、入退所調整の運用ルールを統一した。
④ 空床対策の強化:予定外の空床には入所日の前倒しやショートステイ受入れを積極的に行うとともに、施設医師との連携により月曜日の入所受入れを開始した。
⑤ 多職種連携と職員教育:管理者が毎朝の朝礼で稼働率や空床状況を共有し、老健の役割や施設運営に関する勉強会を実施した。また、同日入退所・翌日入所を基本とし、多職種が連携して受入準備を行う体制を整備した。
4.結果
平均稼働率は2024年度91.4%から2025年度96.4%、2026年度98.6%(2026年7月現在)へ向上した。ベッドコントロールを標準化したことで、相談室リーダーへ集中していた業務負担は軽減し、相談室全職員が施設全体を意識して主体的に入退所調整を行うようになった。毎日の情報共有により急な退所にも迅速な対応が可能となり、同日入退所や翌日入所も定着した。また、現場職員も入退所支援を施設全体の課題として捉えるようになり、多職種が共通目標を持って受入れに取り組む体制が構築された。
5.考察
ベッドコントロール表による情報の可視化は、属人的に保有していた情報を組織全体で共有可能な情報へ転換した。その結果、相談室全員が施設全体の稼働状況を俯瞰して把握できるようになり、担当者任せではない主体的な入退所調整が可能となったと考える。さらに、管理者が毎日稼働率を共有したことにより、相談室だけでなく介護・看護・リハビリテーション職員にも「空床を作らない」という共通目標が浸透した。このことが、多職種協働による受入体制の強化につながり、稼働率向上に寄与したと考えられる。また、稼働率向上を継続して実感できたことは、勉強会で共有した老健の存在価値や社会的役割への理解を実践へ結び付ける機会となった。その結果、職員の主体性や改善意識が醸成され、新たな業務改善にも前向きに取り組む組織風土の形成につながっている。本研究から、ベッドコントロールは相談室のみで完結する業務ではなく、管理者のマネジメントのもと、支援相談員が実務の中核を担い、多職種が共通目標を持って参画する施設全体のマネジメントであることが示唆された。
6.まとめ
管理者と支援相談員を中心としたベッドコントロール体制の標準化は、情報共有と多職種連携を促進し、属人的な運用から施設全体で取り組むマネジメントへ転換することができた。その結果、継続的な稼働率向上だけでなく、職員の主体性や組織風土の醸成にもつながった。今後も継続的な改善を重ね、地域に求められる介護老人保健施設として質の高い入退所支援と安定した施設運営を目指していきたい。
介護老人保健施設では、利用者の状態変化に応じた迅速な入退所調整を行い、地域における限られた介護資源であるベッドを有効活用することが求められる。当施設は鳥取県西部に位置する入所定員89床(うちショートステイ1床、空床利用)の超強化型介護老人保健施設であり、隣接する透析クリニックとの連携により、透析患者を含む医療的ニーズの高い利用者の受入れにも対応している。しかし、ベッドコントロールが属人化していたため、急な退所への対応や入退所調整が遅れ、2024年度の平均稼働率は91.4%と低迷していた。そこで、管理者と支援相談員を中心にベッドコントロール体制を見直し、業務改善に取り組んだ。
2.現状と課題
従来は管理者と相談室リーダーが中心となり、紙媒体を用いてベッドコントロールを行っていた。週1回のベッドコントロール会議以外では、それぞれの担当者が個別に入退所調整を進めており、施設全体の入退所予定や調整状況を俯瞰して把握できる体制ではなかった。その結果、入院や死亡による急な退所への対応が遅れ、空床が長期化していた。また、退所予定日の決定が遅く、入所依頼に対して受入時期を明確に回答できない状況もみられた。さらに、相談室内でも施設全体を意識したベッドコントロールではなく担当利用者ごとの調整になりやすく、現場職員も稼働率を自分事として捉えにくい状況であった。
3.方法
これらの課題を改善するため、管理者と支援相談員を中心にベッドコントロール体制を見直し、相談室職員全員が主体的に関わる体制へ変更した。具体的な取り組みとして、以下を実施した。
① 情報の可視化:Excelによるベッドコントロール表を作成し、全居室の入退所予定および調整状況を一覧化した。
② 情報共有の強化:毎日ベッドコントロールミーティングを開催し、空床状況、入退所調整、稼働率予測、在宅復帰率、回転率などを共有した。
③ 運用ルールの標準化:入所依頼への迅速な回答、施設医による受入可否の事前確認、退所日の早期決定(原則2週間前)、家族都合による入所遅延を防ぐための施設送迎など、入退所調整の運用ルールを統一した。
④ 空床対策の強化:予定外の空床には入所日の前倒しやショートステイ受入れを積極的に行うとともに、施設医師との連携により月曜日の入所受入れを開始した。
⑤ 多職種連携と職員教育:管理者が毎朝の朝礼で稼働率や空床状況を共有し、老健の役割や施設運営に関する勉強会を実施した。また、同日入退所・翌日入所を基本とし、多職種が連携して受入準備を行う体制を整備した。
4.結果
平均稼働率は2024年度91.4%から2025年度96.4%、2026年度98.6%(2026年7月現在)へ向上した。ベッドコントロールを標準化したことで、相談室リーダーへ集中していた業務負担は軽減し、相談室全職員が施設全体を意識して主体的に入退所調整を行うようになった。毎日の情報共有により急な退所にも迅速な対応が可能となり、同日入退所や翌日入所も定着した。また、現場職員も入退所支援を施設全体の課題として捉えるようになり、多職種が共通目標を持って受入れに取り組む体制が構築された。
5.考察
ベッドコントロール表による情報の可視化は、属人的に保有していた情報を組織全体で共有可能な情報へ転換した。その結果、相談室全員が施設全体の稼働状況を俯瞰して把握できるようになり、担当者任せではない主体的な入退所調整が可能となったと考える。さらに、管理者が毎日稼働率を共有したことにより、相談室だけでなく介護・看護・リハビリテーション職員にも「空床を作らない」という共通目標が浸透した。このことが、多職種協働による受入体制の強化につながり、稼働率向上に寄与したと考えられる。また、稼働率向上を継続して実感できたことは、勉強会で共有した老健の存在価値や社会的役割への理解を実践へ結び付ける機会となった。その結果、職員の主体性や改善意識が醸成され、新たな業務改善にも前向きに取り組む組織風土の形成につながっている。本研究から、ベッドコントロールは相談室のみで完結する業務ではなく、管理者のマネジメントのもと、支援相談員が実務の中核を担い、多職種が共通目標を持って参画する施設全体のマネジメントであることが示唆された。
6.まとめ
管理者と支援相談員を中心としたベッドコントロール体制の標準化は、情報共有と多職種連携を促進し、属人的な運用から施設全体で取り組むマネジメントへ転換することができた。その結果、継続的な稼働率向上だけでなく、職員の主体性や組織風土の醸成にもつながった。今後も継続的な改善を重ね、地域に求められる介護老人保健施設として質の高い入退所支援と安定した施設運営を目指していきたい。
