講演情報

[22-P-TZ-02]スマートベット導入後の業務の変化~当施設のDX化に向けて~

*仲松 善孝、寺田 未奈、北 敏博、東江 若奈 (沖縄県 介護老人保健施設亀の里)
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はじめに 厚生労働省は、2040年頃に向けて医療・介護の複合的ニーズを有する85歳以上人口の増加に伴い、介護サービス需要の増大・多様化を見込んでいる。一方、介護人材不足は今後さらに深刻化するとされ、その解決策の一つとして介護DXが推進されている。介護DXとは、デジタル技術を活用して業務プロセスを見直し、記録業務の効率化や情報共有の迅速化を図ることで、職員の負担軽減と専門性の向上を実現する取り組みである。当施設では令和6年11月よりSmart Bed System(以下:SBS)を導入し、約1年が経過した。本研究では、SBS導入後の業務の変化や活用状況、課題について全職種を対象にアンケート調査を実施し、その効果と今後の課題について検討した。Ⅰ.目的 SBS導入による業務の変化や職員の認識を明らかにし、多職種連携の強化、業務効率化、ケアの質向上に向けた今後の運用方法を検討することを目的とした。Ⅱ.方法 研究方法は無記名アンケート調査とした。対象は看護師9名、介護職28名、リハビリ職7名、相談員4名の計48名である。調査期間は令和7年10月から12月までとした。Ⅲ.倫理的配慮 アンケートは無記名で実施し、回答内容により不利益が生じないよう十分配慮した。アンケート提出をもって研究参加への同意を得たものとし、倫理委員会の承認を得て実施した。利益相反はない。Ⅳ.結果 アンケートは48名全員から回答が得られ、回収率は100%であった。SBSは睡眠、呼吸数、心拍数などの生体情報を記録するとともに、ADLや必要なケア内容、当日のスケジュールを共有できるシステムである。アンケートでは、多くの職員が「業務効率が向上した」「情報共有がしやすくなった」と回答した。特に介護職では、センサーや眠りスキャン、カメラ機能の活用による夜間業務の負担軽減を実感していた。看護職からは呼吸数や心拍数の変化を継続的に確認できる点が評価され、リハビリ職からは睡眠状況を踏まえたリハビリ実施や活動量の判断に役立つとの意見があった。通信環境やシステム不具合、操作方法の複雑さに関する課題も複数挙げられた。Ⅴ.考察 介護DXという言葉自体の認知度は高くなかったが、既存の電子カルテと連動できるSBS導入によりデジタル技術を活用した業務効率を実感することができた。バイタルサインは測定器を端末へかざすだけで自動入力されるため、入力時間の短縮や誤入力防止につながり、記録業務の効率化が図られた。また、入所時に多職種が同席してADLを確認しながらピクトグラムを入力することで、情報共有の迅速化と認識の統一が可能となり、多職種連携の強化につながった。 センサー機能では、「危険度を判断しやすくなった」「必要な時間帯のみ設定できる」などの評価が多く、転倒リスクの高い利用者への見守り体制強化に有効であった。また、呼吸数や心拍数を継続的に確認できることから、体調変化の早期発見や異常時の初期対応にも役立つと考えられた。さらに、コール履歴や離床履歴を振り返ることで利用者の生活状況を客観的に把握でき、家族への説明やケア内容の見直しにも活用できることが示された。 眠りスキャンについては、「睡眠状況を把握できる」「睡眠薬使用の判断材料となる」「翌日の覚醒状態や活動性を予測できる」など、多くの有用性が示された。過去の睡眠データを確認できることから、昼夜逆転や睡眠障害への支援だけでなく、日中活動との関連を評価し、生活リズム改善に向けたケアにも活用できると考えられる。一方で、実際の様子と判定結果が一致しない場合もあり、システム情報だけで判断するのではなく、職員の観察と組み合わせて活用することが重要である。 カメラ機能については、「訪室が必要か判断しやすい」「不要な訪室を減らせる」「利用者を刺激せずに見守れる」など夜間業務の負担軽減に寄与していた。また、録画機能により転倒場面の検証や受傷状況の確認ができ、多職種による事故分析や再発防止にも活用できたことは、リスクマネジメントの観点からも有用であった。しかし、通信環境やシステム不具合、操作方法の習熟など、運用上の課題も明らかとなり、安定したシステム環境の整備が必要である。 導入時の説明については理解できたとの回答が多かった一方で、設定方法やトラブル対応に不安を感じる職員もみられた。介護DXは機器を導入することが目的ではなく、職員が適切に活用し、利用者へ還元することで初めて効果を発揮する。そのため、継続した研修や操作方法の標準化、ICTに精通した職員の育成など、教育体制の整備も重要である。Ⅵ.まとめ 今回の調査から、SBSは業務効率化、多職種連携、利用者の状態把握、夜間見守りの充実など、多くの場面で有効性が示された。また、体調変化の早期発見や転倒予防、事故検証など、安全で質の高いケアの提供にも寄与する可能性が示唆された。一方で、操作習熟に時間を要することやシステム不具合、通信環境の改善など運用上の課題も明らかとなった。 今後は継続的な職員教育と運用方法の見直しを行い、システムを最大限活用できる体制を整備することが重要である。介護DXは人材不足への対応だけでなく、職員が本来行うべき利用者との関わりの時間を確保し、より質の高いケアを実現するための手段である。SBSの活用をさらに推進し、業務効率化と介護サービスの質向上を両立できる持続可能な介護体制の構築を目指していきたい。参考文献 1)日本経営 介護DXのメリット 2) 厚生労働省 「令和7年度介護DXの推進」