講演情報

[23-P-CMO-03]リハビリ・介護職における足底の障害の現状調査アンケート調査及び加速度計・足圧計を用いた分析にて

*良井 健二1、小川 康恭1、盆子原 秀三2、吉田 吏江3 (東京都 1. 介護老人保健施設蓮根ひまわり苑、2. SBC東京医療大学、3. 翠会ヘルスケアグループ)
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【はじめに】
当施設において職員が足底筋膜炎により休職するケースが発生した。医療・介護の現場において職業病として認知度の高い腰痛に比べ、これまで注目されることの少なかった足底の痛み等の障害についてその現状を調査する事は有意義と考えた。
【目的】
介護施設等では職員の身体的負担が大きくなりやすい。特に腰背部痛は関心が高く、対策も多数提案されている。一方、足底筋膜炎による足底の痛み等の障害と介護業務との関連については現状ほとんど注目されていない。介護施設等が良好な職場環境を構築し持続的なサービスの向上を図る為には足底の障害を防止することが重要である。
【方法】
(1)病院、介護施設に勤務するリハビリ・介護職員を対象とし足底筋膜炎を中心とする足の痛み等の障害についてアンケート調査を実施。主な質問項目は年齢、性別、身長体重、職種、運動習慣、業務中の履物、足底の痛みの有無(時期と継続性、痛みの出る場面、作業、その重量負荷および頻度)、医療機関等の受診や処置、足底以外の痛みの有無、神経症状の有無とした。
(2)模擬的な移乗介助作業動作を動画撮影し加速度計と足圧計による解析を行い足底の痛みの発症メカニズムを調査した。足圧は移乗介助動作時の前側の足で計測し、腰痛防止のために推奨される体幹直立位での介助動作と体幹前傾を許容した介助動作の2パターンで計測し比較を行った。
【結果】
(1)アンケートの回答数143名。性別の内訳は男性44名、女性89名、不明10名。職種別ではリハビリ職26名、介護職110名、不明7名。これまでに足底の痛みを経験した者は31名(約22%)、内18名が現在も痛みが継続し、医療機関を受診した者は11名であった。性別では男性が16%、女性26%で痛みを経験していた。年齢では男性は40~49歳の層に痛みのある者が多く分布し20名中5名、25%で痛みを経験していた。女性は痛みを経験する者が各年代に広く分布していたが、30~39歳の層で12名中5名、約42%と最も割合が高い結果であった。BMI18未満で約8%、18~22未満で約16%、22~26未満で約21%、26~30未満で約38%、30以上で約50%が痛みを経験しておりBMIと痛みを経験した割合で正の相関関係がみられた。女性ではBMIの平均値で痛み有り、無しの群間で有意差が見られた(p<0.05)。痛みの出る場面では起床時が10名、通勤中が3名、業務中16名、業務後6名安静時3名、その他11名(複数回答)。痛みの出る業務は歩行介助9名、移乗介助5名、排泄介助3名、入浴介助1名、その他7名(複数回答)。更に痛みのでる業務の負荷と頻度に対する質問では負荷大6名(頻繁3名、時々3名、ほぼ無し0名)負荷中2名(頻繁1名、時々1名、ほぼ無し0名)、負荷小8名(頻繁3名、時々3名、ほぼ無し1名、不明1名)であった。足底の痛みを有する群の87%で他の身体部位にも痛みを有していた。部位別にみると腰背部(約52%)、膝関節(約45%)に痛みを有する者が多かった(複数回答可)。現在運動の習慣のある者は足底の痛み有り群で22%、足底の痛み無し群で28%、ランニング習慣のある者は、痛み有り群で約0.03%、痛み無し群で約11%であった。履物については痛み有り、無し両郡ともに90%以上でスニーカーやナースシューズ等足底の痛みとの関係では低リスクのものを選択していた。
(2) 加速度計による2次元動作解析では介助者は片脚半歩前位から体幹重心(第6胸椎)はいったん後方に移動した後に大きく前方へ移動し被介助者を持ち上げる準備の体勢となる。その後、体幹重心は下降すると共に後方へ移動することで被介助者の離殿が起こっていた。これは半歩前スクワット動作と類似した動作パターンであった。足圧計による調査では、体幹直立位での移乗介助は、体幹前傾位での介助に比べ足圧中心の軌跡が前方に位置していた。また足底圧最大値は体幹直立位では計測上限を超える3000mmhg以上である一方、前傾位では2873mmhgであった。最大値が検出された部位はどちらの姿勢も拇指付近であった。
【考察】
介護施設等で働くリハビリ・介護職を対象としたアンケート調査では足底の痛みを経験したものは143名中31人(約22%)であり、一般の足底筋膜炎の有病率(約10%)と比較し高い割合を示した。日々の業務を通じ経験的に感じる印象と比べてもより多くの者が足底の痛みを感じながら業務に臨んでいる現状がデータとして確認できた。女性は男性に比べ足底の痛みを発症する割合が高く、痛みの割合とBMIの間で正の相関関係が見られた。痛みを感じる場面では業務中、特に歩行介助や移乗介助にて痛みを経験する者が多かった。これらの知見は対応策を講じる上で参考とし得ると考えた。また、当初リスク要因と考えていたランニング等の運動について、運動習慣を有する者の方が痛みの発生率が低く、痛みの予防に運動療法が効果的である可能性が示唆された。また移乗介助の動作解析では半歩前スクワット動作と類似の動作パターンが抽出され、先行研究では半歩前スクワットでは両足揃えてのスクワットに比べ前側の足に約1.5倍の膝伸展モーメントが生じるとされており、この負荷により前側の足底筋膜に強い張力が加わることが足底の痛みに関わっている可能性を考えた。足圧計による計測でも体幹直立での移乗介助動作は前傾位での動作に比べ、前側の足の足圧中心が前方に位置し、足圧中心も増大した。一般的に推奨される足を前後に開き相手に近づく事で体幹前傾を軽減する移乗介助姿勢は腰痛防止には効果的だが前側の足の負担を増大し足底筋膜炎の発症に繋がる可能性が示唆された。これは足底の痛みを有する者の中には、足底部以外の痛みも有する者が多く特に腰背部と膝関節の痛みを有する者が多いというアンケート結果とも整合していた。今後は足圧計測による分析のサンプルを増やしリハビリ・介護業務と足底の痛みの関連性を調査する必要があると考えた。