講演情報
[22-O-L009-04]当施設認知棟における集団リハビリの取り組み
*鈴木 飛雄馬 (神奈川県 介護老人保健施設レストア横浜)
【はじめに】当施設の認知棟では、自発性の低下による食席での日中の傾眠や活動量の低下がみられる利用者が多く、また繰り返しの質問や帰宅願望等行動・心理症状(以下、BPSD)の発現、それに伴うインシデント・アクシデントが散見されている。介護老人保健施設のリハビリは個別リハビリが基準とされているが、先行研究にて、集団リハビリで、認知症重症度が低減する可能性があると述べられている。そこで、活動機会の提供、他者交流機会の増加と心身機能の維持を目的として、集団リハビリを実施し、その効果を検討し報告する。
【対象・方法】
研究対象者は2026年2月1日から5月31日の期間に、3カ月以上入所していた利用者31名とした。ターミナルケア加算を算定している利用者については、評価の負担を考慮し、研究対象から除外した。性別は男性9名、女性22名であった。年齢は87.4±5.7(平均±標準偏差)歳、介護度は要介護3.4±1.1であった。認知症高齢者の日常生活自立度はIIIaが26名、IIIbが1名、IVが4名であった。また、先行文献を基に作成した個別評価表の対象者は、認知棟担当のリハビリスタッフで選択したBPSDの発現頻度が高い利用者、長期入所により活気が乏しくなった利用者14名とした。
実施方法は、週1回、40分間の集団リハビリを3カ月実施した。参加対象者は、入浴や面会を実施していない全員とした。内容は認知症疾患診療ガイドラインに記載されている認知機能訓練・運動療法・音楽療法等を参考に、日付・場所の確認、点呼、座位体操、アクティビティ、回想法、歌唱を組み合わせた。誘導・解散・実施中の介助を介護福祉士に依頼した。
評価方法は、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下、HDS-R)と個別評価表の2項目とし、3カ月間実施した利用者の変化を追った。HDS-Rは、介入前後に研究対象者全員に実施した。個別評価表は、参加状態についての参加率・集団への関心の2項目、集団内行動特性についての協調性・情緒の安定・対人交流の3項目の計5項目について、5を最高点とした5段階で集団リハビリ実施毎に評価した。また、発言・行動を記録する自由記述欄を設けた。5段階で評価する項目については、評価者間で大きな乖離がないように、観察項目をそれぞれ2~3個設定した。
【結果】
全体的に集団リハビリの開始に伴い、顔は上がり、模倣にて活動できることが多かった。また、身体機能・認知機能面の両方で介助が必要な要介護5の利用者についても、鈴やマラカス等の楽器を使用し、介助することで、開眼反応や楽器を鳴らすことが可能であった。
HDS-Rについて、対象者31名の平均値は、介入前は6.7±6.7点、介入後は5.0±4.6であった。HDS-Rの評価結果から有意な変化は認めなかった。
個別評価表の5段階評価の項目では、出席率の安定化、対人交流において4以上が増え積極性の向上が読み取れた。自由記述欄では、自ら集団に近づくことや感想を話すなど集団への関心・自発性の向上、40分間はその場から離席しない情動の安定化が観察された。また、個別リハビリにおいては運動に対して消極的な利用者が、集団リハビリでは周囲を見ながら行うような変化も認められた。
【考察】
今回の介入では、HDS-Rの得点に有意な変化は認められなかった。今回実施した認知機能訓練・運動療法・音楽療法は、認知症疾患診療ガイドラインにも記載されており、参加対象者に対してタスクは妥当であったと考えられる。また、タスクの難易度は、対象を全員にしたため、低く設定していた。認知症は進行性の疾患であり、短期間の介入で認知機能自体を改善させることは困難なことに加え、HDS-Rは主に見当識や記憶などの認知機能を評価するスケールであるため、集団活動による自発性や社会性の変化を十分に反映できなかった可能性が考えられる。
一方で、集団リハビリ中は模倣にて活動が可能であり、活動性の向上が認められており、覚醒不良な利用者に対しては、聴覚刺激が有効であり、さらに集団で活動することで周囲への関心を向上させることができたと考える。
そして、個人評価において、自発的な発言が見られるようになることや、周囲を見ながら活動する様子が観察された。これらの変化は、利用者の自発性、活動・周囲への関心が向上したことを示していると考えられる。認知症高齢者は認知機能の低下だけでなく、それに伴う活動量の低下や他者交流機会の減少によって、自発性の低下が認められやすい。集団リハビリでは、他利用者やスタッフといった集団から刺激を受けることで、活動への興味や関心が高まりやすいと考えられる。また、集団の中で他者の行動を見ることや、同じ活動をすることが、所属意識を高め、自発的な発言や行動を促すきっかけとなった可能性があり、これらは協調性が重視される日本であるからこそ、この結果が得られたと考える。これらの質的な変化を評価する指標として、今回作成した個別評価表は有効であったと考える。
認知症高齢者に対しては、認知機能の改善だけでなく、その人らしい生活の継続や社会参加の促進が重要視されている。今回見られた自発的な発言の増加や活動性の向上は、利用者が集団に参加し周囲との関わりを持ちながら、主体的に過ごす機会の増加につながったと考えられ、集団リハビリの一定の有効性を示す結果であったと言える。
【おわりに】
今回の3カ月間での集団リハビリの取り組みでは、HDS-Rの得点には変化が認められなかったものの、利用者の自発性の向上、活動・参加を促進する効果があった可能性が示唆された。また、今後は利用者の参加だけでなく、多職種で情報を共有しフロア全体で関わっていくことで、BPSDの低減やインシデント・アクシデントの減少にも繋がると考える。
【対象・方法】
研究対象者は2026年2月1日から5月31日の期間に、3カ月以上入所していた利用者31名とした。ターミナルケア加算を算定している利用者については、評価の負担を考慮し、研究対象から除外した。性別は男性9名、女性22名であった。年齢は87.4±5.7(平均±標準偏差)歳、介護度は要介護3.4±1.1であった。認知症高齢者の日常生活自立度はIIIaが26名、IIIbが1名、IVが4名であった。また、先行文献を基に作成した個別評価表の対象者は、認知棟担当のリハビリスタッフで選択したBPSDの発現頻度が高い利用者、長期入所により活気が乏しくなった利用者14名とした。
実施方法は、週1回、40分間の集団リハビリを3カ月実施した。参加対象者は、入浴や面会を実施していない全員とした。内容は認知症疾患診療ガイドラインに記載されている認知機能訓練・運動療法・音楽療法等を参考に、日付・場所の確認、点呼、座位体操、アクティビティ、回想法、歌唱を組み合わせた。誘導・解散・実施中の介助を介護福祉士に依頼した。
評価方法は、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下、HDS-R)と個別評価表の2項目とし、3カ月間実施した利用者の変化を追った。HDS-Rは、介入前後に研究対象者全員に実施した。個別評価表は、参加状態についての参加率・集団への関心の2項目、集団内行動特性についての協調性・情緒の安定・対人交流の3項目の計5項目について、5を最高点とした5段階で集団リハビリ実施毎に評価した。また、発言・行動を記録する自由記述欄を設けた。5段階で評価する項目については、評価者間で大きな乖離がないように、観察項目をそれぞれ2~3個設定した。
【結果】
全体的に集団リハビリの開始に伴い、顔は上がり、模倣にて活動できることが多かった。また、身体機能・認知機能面の両方で介助が必要な要介護5の利用者についても、鈴やマラカス等の楽器を使用し、介助することで、開眼反応や楽器を鳴らすことが可能であった。
HDS-Rについて、対象者31名の平均値は、介入前は6.7±6.7点、介入後は5.0±4.6であった。HDS-Rの評価結果から有意な変化は認めなかった。
個別評価表の5段階評価の項目では、出席率の安定化、対人交流において4以上が増え積極性の向上が読み取れた。自由記述欄では、自ら集団に近づくことや感想を話すなど集団への関心・自発性の向上、40分間はその場から離席しない情動の安定化が観察された。また、個別リハビリにおいては運動に対して消極的な利用者が、集団リハビリでは周囲を見ながら行うような変化も認められた。
【考察】
今回の介入では、HDS-Rの得点に有意な変化は認められなかった。今回実施した認知機能訓練・運動療法・音楽療法は、認知症疾患診療ガイドラインにも記載されており、参加対象者に対してタスクは妥当であったと考えられる。また、タスクの難易度は、対象を全員にしたため、低く設定していた。認知症は進行性の疾患であり、短期間の介入で認知機能自体を改善させることは困難なことに加え、HDS-Rは主に見当識や記憶などの認知機能を評価するスケールであるため、集団活動による自発性や社会性の変化を十分に反映できなかった可能性が考えられる。
一方で、集団リハビリ中は模倣にて活動が可能であり、活動性の向上が認められており、覚醒不良な利用者に対しては、聴覚刺激が有効であり、さらに集団で活動することで周囲への関心を向上させることができたと考える。
そして、個人評価において、自発的な発言が見られるようになることや、周囲を見ながら活動する様子が観察された。これらの変化は、利用者の自発性、活動・周囲への関心が向上したことを示していると考えられる。認知症高齢者は認知機能の低下だけでなく、それに伴う活動量の低下や他者交流機会の減少によって、自発性の低下が認められやすい。集団リハビリでは、他利用者やスタッフといった集団から刺激を受けることで、活動への興味や関心が高まりやすいと考えられる。また、集団の中で他者の行動を見ることや、同じ活動をすることが、所属意識を高め、自発的な発言や行動を促すきっかけとなった可能性があり、これらは協調性が重視される日本であるからこそ、この結果が得られたと考える。これらの質的な変化を評価する指標として、今回作成した個別評価表は有効であったと考える。
認知症高齢者に対しては、認知機能の改善だけでなく、その人らしい生活の継続や社会参加の促進が重要視されている。今回見られた自発的な発言の増加や活動性の向上は、利用者が集団に参加し周囲との関わりを持ちながら、主体的に過ごす機会の増加につながったと考えられ、集団リハビリの一定の有効性を示す結果であったと言える。
【おわりに】
今回の3カ月間での集団リハビリの取り組みでは、HDS-Rの得点には変化が認められなかったものの、利用者の自発性の向上、活動・参加を促進する効果があった可能性が示唆された。また、今後は利用者の参加だけでなく、多職種で情報を共有しフロア全体で関わっていくことで、BPSDの低減やインシデント・アクシデントの減少にも繋がると考える。
