講演情報
[23-P-F001-04]ポストコロナ時代の老健レクリエーション再考地域文化の継承と再構築
*和賀 慎治1、土田 慎之介1、浦野 和子1、浦野 友彦2 (秋田県 1. 介護老人保健施設照隅苑、2. 国際医療福祉大学介護老人保健施設マロニエ苑)
【背景・目的】秋田県羽後町は人口減少と高齢化が進行する地域であり、高齢化率も高い。一方で、国指定重要無形民俗文化財である西馬音内盆踊りに象徴されるように、地域文化の結びつきが強い町でもある。介護老人保健施設照隅苑は2000年に開設された老健施設であり、これまで地域との交流を重視した施設運営を行ってきた。コロナ禍以前には、地元ボランティアの協力による多彩なレクリエーションを行い、毎年8月には西馬音内盆踊り関係者とともに苑の庭に櫓を組み、盆踊り大会を開催していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により、外部との接触を伴う行事は大きく制限され、地域参加型レクリエーションは中断を余儀なくされた。近年、全国的にはコロナ前に近い開放的な運営へ戻す施設も増えているが、地方では依然として慎重な姿勢が根強い。本報告の目的は、ポストコロナ時代における当苑のレクリエーション再構築の取り組みを整理し、今後の老健施設における地域交流型レクリエーションの在り方を考察することである。【方法】コロナ禍後、当苑では地元ボランティアの協力再開が難しく、また西馬音内盆踊り関係者との共同イベントも直ちには再開できなかった。そこで外部に依存せず、介護職員を中心とした施設内完結型・参加型レクリエーションへ方針を転換した。通信カラオケをリース導入し、歌謡曲や演歌の歌唱を中心に据えた企画を展開した。また、季節感や地域文化を重視し、月ごとに特色のある行事を継続した。具体的には、8月に盆踊りDVD上映会、9月に敬老会、10月に運動会、11月に紅葉祭り、12月にクリスマス会、1月に新年会、2月に節分会、3月に移動式雛壇を用いたひな祭り、4月に花見、5月に端午の節句、6月に氏神様参りと歌謡ショー、7月に七夕祭りを実施した。各行事では、職員が仮装や演出を工夫し、入所者の参加意欲を高めることを重視した。【結果】外部協力が得られない状況下でも、職員主体で年間を通じたレクリエーションを継続する体制を再構築することができた。特に通信カラオケの導入により、歌唱を中心とした参加型企画が安定して実施可能となり、歌に親しみのある入所者が主体的に参加しやすい環境が整った。また、季節行事を途切れなく行うことで、入所者にとって生活のリズムや季節の移ろいを感じる機会が維持された。さらに、職員が自ら企画・演出を担うことで、施設独自のカラーを持つレクリエーション文化が形成されつつある。たとえば、新年会での獅子舞、節分会での鬼役、氏神様参りや歌謡ショーなどは、地域性と娯楽性を兼ね備えた行事として定着してきた。一方で、外部ボランティアや家族を交えた交流の再開にはなお課題が残っている。【考察】ポストコロナ時代の老健施設レクリエーションにおいては、単に「元に戻す」だけでなく、感染対策を踏まえつつ、施設独自の強みを再構築する視点が重要と考えられた。当苑では、地域文化を背景にしながらも、まずは職員主体のレクリエーションを充実させることで、入所者の楽しみと生活の質を維持する道を選択した。この方法は、外部資源が不安定な状況でも継続可能性が高く、地方老健における現実的な対応策の一つと考えられる。一方で、老健の本来的役割を考えれば、地域や家族との交流再開は重要な課題である。羽後町周辺ではなお慎重な施設が多く、単独で急激に開放的方針へ転換することは難しいが、職員間でその意義を共有し、段階的に開かれたレクリエーションへ移行していく必要がある。今後は、以前のように西馬音内盆踊り関係者とともに櫓を組み、苑庭で盆踊り大会を開催できる体制の復活を最終目標として、地域との再接続を図っていきたい。
