講演情報

[22-O-D004-07]BPSDの先にある「思い」を探して。~背景要因を踏まえたケア提案ができるまで~

*岡本 愛梨 (神奈川県 介護老人保健施設 宮沢の里 はなもも苑)
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【はじめに】
認知症のある利用者が増加する中、BPSDへの対応は介護現場における重要な課題であり、認知症ケアの質の向上が求められている。しかし、BPSDに対するケアは職員個々の経験や知識に依存しやすく、背景要因を十分にアセスメントした上でケアを検討することが難しい場面が見られた。

当施設では認知症ケアの質の向上を目的に認知症ケアチームを立ち上げ、利用者一人ひとりの背景要因を踏まえたケアの検討に取り組んでいる。しかし、認知症ケアチームの職員Bは自らBPSDの背景要因を整理し、ケアを提案することが難しいという課題があった。その背景には、背景要因をアセスメントしケアへ結びつける考え方を学ぶ機会や、指導を受ける時間が十分に確保されていなかったことが考えられた。

【目的】
職員Bとともに利用者のBPSDの背景要因を整理し、ケアを検討する機会を設けることで、職員Bが背景要因を踏まえたケアを立案、実践できるようになり、認知症ケアの質の向上に繋げることを目的とした。

【対象】
職員B:認知症ケアチーム所属。自らBPSDの背景要因を踏まえたケアの立案、提案をすることが難しい。利用者A:男性、アルツハイマー型認知症、認知症高齢者自立度Ⅲa落ち着かずフロア内を移動する行動や不安、睡眠障害等のBPSDがみられる。トイレの訴えも頻回で、都度トイレ誘導を実施していたがトイレ内に排尿がないことも多々あった。トイレ誘導の回数を重ねると疲れた様子で、立位も次第に悪くなってくることもあり。しきりに職員を呼び「どうしたら良いかわからない」等の発言も多く、職員Bが対応に困難を感じている。

【方法】
期間中、1対1の教育的介入を以下の手順で実施した。

1. 対象者の選定 職員Bへの聞き取りを行い、ケアの提案に困っている利用者を対象として選定した。
2. 知識の習得 職員BにBPSDの背景要因に関する研修を実施した。
3. 協働によるケア立案 認知症チームケア推進ワークシート(以下ワークシート)を用い、職員Bとともに対象者のBPSDの背景要因を整理し、複数のケアを検討したうえで実施するケアを選定した。
4. ケアの実施  職員Bが対象利用者へケアを実施した。
5. 自立したケア立案  ケア実践後、職員Bが単独でワークシートを用いて背景要因を分析し、新たなケアを提案した。
6. 評価  職員Bに背景要因を踏まえたケアを提案できたかについて自己評価の実施、および取り組みに対する感想を聴取した。

【結果】第一段階では、BPSDの背景要因として食事席の環境に着目し、食事席の変更を実施した。しかし、最初は利用者Aの落ち着きは見られず、かえって戸惑う様子がみられたが、1か月経過後、食事席の環境にも慣れ笑顔でお話する様子も頻繁にみられるようになった。
振り返りの中で職員Bは利用者の思いや人間関係を十分に確認せず、憶測でケアを考えていたことに気づいた。

第二段階では、職員Bが利用者本人へ好きなことやこれまでの生活について聞き取りを行い、背景要因を再度整理した。その結果、日中の活動不足や自信の低下が背景要因として考えられた。そこでリハビリ職と連携し、塗り絵や計算ドリルなど利用者の興味や能力に合わせた活動を取り入れた個別ケアを立案したが、ほどなくして利用者AのADLの低下が見られベッド上での生活が増え退所となってしまった。職員Bは背景要因を踏まえてケアを考える視点を身に着け、自ら個別ケアを提案できるようになった。

【考察】
本取り組みを通して、職員BはBPSDを「困った行動」と捉えるのではなく、「利用者からのサイン」として考えられるようになった。これまでは、利用者の背景要因を整理し、ケアをじっくり考える機会が少なかったが、ワークシートを活用しながら一緒に考えることで、「本人への聞き取り」「背景要因の分析」「ケアの立案」「評価」という一連の流れを理解し、実践できるようになった。また、自らリハビリ職へ相談し連携を図るなど、多職種と協力しながら考える姿勢も見られた。今後は、本取り組みを認知症ケアチーム中心に全体へ展開し、職員一人ひとりが背景要因を踏まえてケアを考えられる体制づくりにつなげていきたい。