2024年室内環境学会学術大会

プログラム・講演要旨集

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シンポジウム
日時2024年11月30日(土) 15:00~17:00
会場北海道大学 学術交流会館2F講堂
テーマ北国から学ぶ室内環境と健康
趣旨 北海道は亜寒帯湿潤気候に属し、日本の最も寒冷で、多雪の地である。旧来アイヌ民族はこの風土に適合した住居「チセ」に居住してきた。開拓にともなって去来した人々は、この風土に適合する住居をつくることができず貧しい室内環境に苦しんできた。この状況を司馬遼太郎は、「一度も北方の冬をしのげるような建物や装備を考えたことがなく、本土の南方建築で間に合わせてきたことは、驚嘆すべき文化」と評し、北海道開拓顧問のホーレス・ケブロンは、「薄紙様ノ家屋 改革スルコト」、開拓長官の黒田清隆は、「家屋改良最も急たる」と述べた。
 このような冬期の室内環境の課題は、世界でいまでも指摘されている。WHOは「住まいと健康に関するガイドライン」の中で、持続可能な開発目標(SDGs)の Goal3(健康)と Goal 11 (まちづくり)の達成に寄与するとして、「冬季室温 18 度以上」、「新築・改修時の断熱」等を勧告した。日本では、健康日本21第3次で、生活習慣病の予防戦略の中で0次予防(環境整備)が必要であり、室内環境の整備と啓発が重要であると記した。
 北海道から始まった「高断熱高気密住宅」に代表される革新的な室内環境の改良は、省エネルギー法に基づく性能住宅基準の向上にともなって、全国に普及しつつある。しかし、これらの住宅性能の向上は、他方で室内環境に大きな格差を発生させた。同時に、室内環境は健康増進に資するべきであるにもかかわらず、シックハウス症候群などの健康影響が発生し、いまだに解決していない。このような住宅性能の変化と副作用が、様々な形で健康に影響していることは看過すべきでない。
 本シンポジウムは、冬期の室内環境の改善の発進地である北海道の経験を共有し、これからの室内環境と健康に向けて議論するものである。
プログラム司会進行:林 基哉(北海道大学 2024年室内環境学会学術大会 大会長)
1. 趣旨説明
     林 基哉(北海道大学工学研究院 特任教授)
2. 北海道の住環境改善
     福島 明(北海道科学大学 名誉教授)
3. 北海道の住宅における先進事例
     櫻井 百子(アトリエmomo 代表)
4. 人口動態統計と気象データを用いた外気温と死亡率の地域比較
     森 太郎(北海道大学工学研究院 教授)
5. 北海道の住環境における健康課題
     池田 敦子(北海道大学保健科学研究院 教授)
6. 討論
学生懇談会
日時2024年11月30日(土) 13:30~15:00
会場北海道大学 学術交流会館 C会場 1F 第1会議室
テーマアイスブレイクで暖まる会
世話人酒井 颯大 (学生会員,静岡県立大学)
三原 千穂 (学生会員,静岡県立大学)
浅岡  凌 (学生会員,東京科学大学)
平澤  匠 (学生会員,東京科学大学)
山本 愛理 (学生会員,東京科学大学)
勝木 皓大 (学生会員,北海道大学)
田中  雄 (学生会員,北海道大学)
趣旨 今年で学生懇談会は16 回目を迎えます。学生懇談会は,本学会の学生活動をより盛んにすることを目的とし,学会に参加する学生同士の親睦を深めたり,情報を交換したりする場となっています。今回のテーマは“アイスブレイクで暖まる会”です。今回の学生懇談会では,冬の北海道にて学生同士が盛んに交流し,普段の学生生活や研究内容,趣味,夢,将来などについて自由に話し合うことを予定しています。所属の異なる学生が集まり仲間の輪を広げることで,新たな発見や今後の楽しみが増えるようにアットホームな雰囲気で開催できればと考えています。どうぞ気軽にご参加ください!
主な内容1)開催趣旨説明
2)参加者の自己紹介
3)アイスブレイク
4)グループディスカッション
5)まとめ
事前予約不要
環境過敏症分科分科会セミナー
日時11 月30 日(土)9:30~11:30
会場C 会場(第1会議室)
主催室内環境学会・環境過敏症分科会
共催日本臨床環境医学会・環境過敏症分科会、生活環境と健康研究会
企画(司会進行)北條祥子、柳沢幸雄、永吉雅人、水越厚史
会場・記録係浦野真弥、川瀬晃弘、徳村雅弘、中里直美、黄琳琳、柳田徹郎
テーマ⼦どもの環境過敏症の発症を予防するために、今、私達は何をすべきか?
開催の趣旨説明 我々は日常生活の90%以上を室内で過ごしており、室内環境が健康に及ぼす影響は大きい。近年、世界的に環境過敏症(環境不耐症)と呼ばれる健康障害を訴える人、特に子どもが急増している。また、環境過敏症と幼児児童生徒の登園登校障害や行動障害との関係が指摘され始めている。
 環境過敏症とは、健常人にとっては何の苦にならないような身の回りの環境要因により多臓器に多彩な症状が出る健康障害の総称である。本症を誘導する外的環境要因として挙げられるのは、比較的微量な化学物質環境(受動喫煙、香料、消毒剤、芳香剤、柔軟剤など)、日常的な物理的環境(光、音、振動、電磁場、気圧・気温変化など)、生物的環境(細菌、カビ、ダニ、ワクチン接種など)などである。環境過敏症の代表例として知られるのは、シックハウス症候群(Sick House Syndrome, SHS)、化学物質過敏症(Multiple Chemical Sensitivity, MCS)、香料過敏症(Fragrance Sensitivity, FS)、電磁過敏症(Electromagnetic Hypersensitivity Syndrome, EHS)などであり、これらは相互に密接な関連性があること、アレルギー疾患と密接に関係していることは知られているが、その病態は科学的に不明なことが多い。
 日本でも、「香害」で不登校になる児童生徒の増加、デジタル教科書導入後に電磁過敏症状で不登校となる児童生徒の増加が問題になっている。しかし、日本は諸外国と比べ、医療関係者も市民も環境過敏症に関する認知度が低く、その対策が遅れている。
 未来を担う子どもの健康と学びを保証するためにも、子どもの環境過敏症の発症予防対策は社会的な最優先課題と考える。また、環境過敏症の様な種々の生活環境要因が複雑に絡み合って発症する健康障害は、発症者の声を聞きながら、幅広い研究分野の研究者が情報交換・情報共有・共同研究を行ながら、日本の実情に適した発症予防対策を検討し、その検討結果を、市民にわかりやすく提示しながら、市民と研究者で知恵を出し合って、発症予防法を模索することが大事だと考え、本セミナーを企画した。
プログラム

1.開会の趣旨説明:北條祥子(室内環境学会・環境過敏症分科会代表) 9:30 開始

2.挨拶:東賢一(室内環境学会理事長、近畿大学医学部予防医学・行動科学教室・教授)

3.今、問題となっている子どもの環境過敏症関連の問題は? 9:40-10:00

  • いのち環境ネットワーク(加藤やすこ):教育のデジタル化に関する諸外国の校内電磁波測定と対策
  • 子どもの健康と学びを守る会(原田弘子・高見英仁子):乳幼児の環境に溢れる化学物質
  • カナリア・ネットワーク全国:今、香害で登園登校できない子どもが増えている

4.基調講演 10:00-10:30

  • 柳沢幸雄(東京大学名誉教授):環境システム工学研究者の立場から;知らないうちにあなたも汚染源 ~香害のメカニズム~
  • 渡井健太郎(近畿大学医学部予防医学・行動科学教室・講師、湘南鎌倉総合病院医師):アレルギー・環境過敏症専門医の立場から;誤診されやすい疾患が多い環境過敏症

5.マルチ異分野の研究者からの提言 10:30-11:25

  • 永吉雅人(新潟県立看護大学・准教授):情報学の立場から;「香害」および環境過敏症症状に関する調査から見えてくることは?
  • 水越厚史(近畿大学医学部予防医学・行動科学教室・講師):疫学の立場から;環境過敏症発症に関与する環境要因は時代と共に変化するのでは?
  • 浦野真弥(環境資源システム総合研究所・所長):環境工学の立場から;製品成分と実測から考える香料化学物質曝露とリスクは?
  • 徳村雅弘(静岡県立大学・助教):環境工学の立場から;室内空気汚染の評価には定量的ノンターゲット分析が有効では?
  • 黄 琳琳(台湾正修科技大学・准教授):建築学の立場から;台湾における室内空気汚染物質の現状からの課題は?
  • 柳田徹郎(オーガニックアパート研究所):都市工学の立場から;環境過敏症患者の住まいづくりのためには患者と作り手、および研究者の知見の蓄積・共有が必要では?
  • 中里直美(元 国際医療福祉大学熱海病院・薬剤師):薬剤師の立場から;脳脊髄液漏出症患者の示す化学物質過敏反応および電磁過敏反応は?
  • 近藤哲哉(関西医療大学・教授):心療内科医の立場から;環境過敏症患者の治療には漢方・鍼灸が有効では?
  • 川瀬晃弘(東洋大学経済学部・教授):経済学の立場から;子どもの環境過敏症の予防に有効な政策対応は?
  • 北條祥子(尚絅学院大学名誉教授、東北大学大学院歯学研究科研究員):臨床環境医学の立場から;子どもの環境過敏症予防は“Think Future, Act Now”の対応が必要では?

6.閉会の挨拶(総括):柳沢幸雄(東京大学名誉教授) 11:25-11:30

7.写真撮影(会場の参加者全員で写真撮影) 11:30-11:35