講演情報

[A-8-07]Patient-Similarity Memory Bank による胸部 X 線異常検知における参照集合の効率化

◎林 大誠1、清水 陽一郎1 (1. 福岡国際医療福祉大)

キーワード:

異常検知、胸部X線画像、メモリバンク、自己教師あり学習、深層学習

胸部X線画像を対象とした教師なし異常検知では,正常画像のパッチ特徴をメモリバンクとして保持し,評価画像との最近傍距離で異常を判定するmemory-bank型手法が高い画像レベル識別性能を示す.しかしこのメモリバンクは訓練正常データの規模に比例して肥大し,大規模データセットでは計算量とメモリ消費の両面でスケーラビリティが課題となる.また,患者ごとの解剖学的バリエーションを考慮すると,全症例を一律の参照集合として用いることは必ずしも効率的でない.本研究では,評価画像ごとに類似する正常症例を動的に選定して局所的なメモリバンクを構築するPatient-Similarity Memory Bank(PSMB)を提案する.PSMBは,各画像の大域特徴間のコサイン類似度に基づき類似度の高い上位K枚の正常症例を選定し,そのK枚のパッチ特徴のみから参照集合を構築する.特徴抽出器には胸部X線に特化した自己教師あり事前学習モデルRAD-DINOを用い,BMADの定義に従うRSNA Pneumonia Detection Challengeで評価した.その結果,参照集合を訓練正常の2.5%(K=200)まで圧縮しても,画像レベルAUROCは全症例を参照するベースラインと統計的に等価であった(DeLong検定p=0.916,許容マージンδ=0.02のTOSTにより等価).さらにKを増やした場合,AUROCはベースラインと同等以上で推移した.以上より,類似症例の動的選定が参照集合を大幅に圧縮しつつ識別性能を維持できることを予備的に示した.本手法は大規模な医用異常検知における参照集合のスケーラビリティ改善に寄与しうる.今後は異常領域の局在性能の評価および他データセットへの汎化性の検証を進める.