講演情報
[C-8-05]超伝導量子干渉素子を用いた特性可変電流比較回路の可変範囲拡大
◎浅野 遥1、吉川 信行1、山梨 裕希1 (1. 横浜国立大学)
キーワード:
単一磁束量子回路、ジョセフソン接合、超伝導量子干渉素子
超伝導単一磁束量子(Single Flux Quantum:SFQ)回路における電流比較回路(Current Comparator:CC)は、超伝導乱数生成器をはじめとするSFQ回路の重要な構成要素である。CCでは入力電流に対して出力確率が遷移するグレーゾーン特性を有しており、その特性は回路を構成するジョセフソン接合(Josephson Junction:JJ)の臨界電流値などに依存する。しかし、JJの臨界電流値は作製ばらつきの影響を受けるため、設計時に意図したグレーゾーン特性からずれるという課題がある。また、SFQ回路を用いたベイジアンネットワークでは、CCの出力確率を条件付き確率表の実現に利用するため、チップ作製後に出力確率を調整できることが望ましい。 本研究では、CCを構成する2つのJJのうち一方を超伝導量子干渉素子(Superconducting Quantum Interference Device:SQUID)へ置換した特性可変電流比較回路を対象とし、その可変範囲の評価および拡大について検討した。SQUIDの有効臨界電流は印加磁束によって変化するため、外部からグレーゾーン特性を制御することができる。シミュレーションの結果、閾値Ithは広い範囲で可変であり、グレーゾーン幅ΔIinについても磁束印加による制御が可能であることを確認した。 さらに、通常のCCを搭載した既存SRNGチップ5個の測定結果を解析し、設計値との比較から作製ばらつきによる特性変動を評価した。その結果、Ithは最大約50 μA、ΔIinは最大約4 μA変動することが分かった。この結果を特性可変CCの可変範囲と比較したところ、閾値については十分な補償能力を有する一方、グレーゾーン幅については補償可能ではあるものの設計余裕が小さいことが明らかとなった。 そこで、グレーゾーン幅の可変範囲拡大を目的として、下部JJをSQUIDへ置換した構成においてSQUID内部のJJの臨界電流値を従来の2倍とした場合のシミュレーションを行った。その結果、SQUIDの有効臨界電流変化量が増加し、グレーゾーン幅の可変範囲を拡大できることを確認した。一方で、磁束変化に対する特性変化が急峻となる傾向も見られ、可変範囲と回路安定性との間にトレードオフが存在することが示唆された。今後は、可変範囲と安定動作を両立するSQUIDパラメータの最適化を行い、作製ばらつきの補償および確率特性の高精度な制御を実現する特性可変電流比較回路の検討を進める。
