講演情報

[BP-1]SOD1-G93S変異陽性筋萎縮性側索硬化症患者の臨床遺伝学的及び病理学的特徴

中村 亮一1, 陸 雄一1, 中杤 昌弘2, 熱田 直樹1, 藤内 玄規1, 伊藤 大輔2, 和泉 唯信3, 橋本 里奈4, 饗場 郁子4, 溝口 功一5, 金井 数明6, 青木 正志7, 徳井 啓介1, 川頭 祐一1, 丹羽 淳一1, 道勇 学1, 岩崎 靖1, 吉田 眞理1, 勝野 雅央2, 祖父江 元1 (1.愛知医科大学, 2.名古屋大学, 3.徳島大学, 4.国立病院機構東名古屋病院, 5.国立病院機構静岡医療センター, 6.福島県立医科大学, 7.東北大学)
※12月15日(木)と16日(金)で同一演題の発表を行います。
【目的】日本では、SOD1遺伝子変異が家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因として最も多く、SOD1-ALS患者は遺伝子変異部位によって臨床像が異なることが知られている。SOD1-G93S変異は特に日本で頻度が高く、その臨床病理遺伝学的特徴を明らかにする。【方法】SOD1-G93S変異を持つ家族性ALS11家系34例及び明確な家族歴のない6例に対して、臨床的特徴を検討した。親子間で発症した14組に対しては発症年齢差の検討を行った。OmniExpressExome Beads Chipで解析した21番染色体上の8,913SNPを用いてハプロタイプの推定を行い、創始者効果の有無を検討した。剖検の得られた5例の病理学的特徴について検討した。【結果】93.9%の患者は下肢発症で深部腱反射の亢進や病的反射は目立たず、下位運動ニューロン徴候が優位であった。生存期間中央値は9.0年 (95%CI :6.5-11.5)であった。一方で、発症年齢(範囲:29.0~75.0歳)は患者間でばらつきがあり、親子間では、子世代では親世代よりも11.1歳若く発症していた(p=0.024)。家系内には未発症保因者も存在し、不完全浸透変異と考えられた。G93S変異陽性患者において、692k baseにわたり、共通のハプロタイプを同定した。病理所見では、頚髄より腰髄の下位運動ニューロンに変性が強く、脊髄後索中間根帯、脊髄小脳路の変性や、下オリーブ核、小脳歯状核、クラーク柱の神経細胞脱落を認めた。【結論】SOD1-G93S変異陽性ALS患者は、多くが下肢発症で緩徐進行型の経過であった。発症年齢は患者間で多様であり、親子間では表現促進現象の存在が示唆された。また、創始者ハプロタイプが認められ、共通の祖先に由来する可能性が示唆された。病理所見では感覚系、オリーブ橋小脳系にも神経変性を認めることが示された。