講演情報

[ES1]がんゲノム医療 基礎講座

平田 真 (国立がん研究センター中央病院 遺伝子診療部門)
がんゲノムプロファイリング検査(がん遺伝子パネル検査:CGP)が2019年に保険収載され、がん領域では保険診療下で多数(100以上)の遺伝子を対象としたゲノム検査が実践されている。このがん遺伝子パネル検査は腫瘍組織における遺伝子プロファイリングを明らかにすることにより、がんの治療、診断、予後予測など診療方針の策定に用いることを主な目的としている。また、これらの検査により生殖細胞系列の所見として、二次的に遺伝性腫瘍の存在が示唆されるもしくは確定されることもある。
 現在、本邦で保険収載されているCGP検査はがん組織由来DNAのみを用いて腫瘍の遺伝子異常を検出するもの(T-onlyパネル解析)、がん組織と正常組織由来のDNAを用いて比較することで生殖細胞系列病的バリアントと腫瘍組織で生じた体細胞遺伝子異常とを検出するもの(Matched-pairパネル解析)、末梢血中に循環する腫瘍細胞由来DNAを検出するもの(Liquid biopsyパネル解析)の3種類がある。
これら3種のCGP検査において報告される生殖細胞系列所見の内容は異なっており、それぞれで評価方法やその後の対応方針を検討する必要がある。これら生殖細胞系列の評価の方針についてはゲノム医療におけるコミュニケーションプロセスに関するガイドライン(厚労科研 小杉班)において指針が示されており、各医療機関でその指針を参照しながら、対応方針が策定され、二次的所見に対応している。本セッションではこれらのがん遺伝子パネル検査の概要を紹介すると共に、本検査によって得られる生殖細胞系列所見の取り扱い、実状について紹介する。