講演情報
[ES10]家族歴聴取、家系図の作成とリスク評価
○松尾 真理 (東京女子医科大学 ゲノム診療科)
家族歴の聴取および正確な家系図の作成は、適切な遺伝医療の実践のために必要不可欠であり、その技能習得は遺伝医療の「基本のき」である。家族歴聴取および家系図作成により、遺伝形式の推定、自然歴情報収集、浸透率・表現度の差異に関する情報収集、特定の個体に関するリスク評価、at risk者の同定、等が可能となる。また遺伝カウンセリングにおいて重要な、家系内の構成員同士の関係性に関する情報収集、クライエントと医療者の信頼関係構築、クライエントへの教育、等にも役立つ。クライエントから聴取した家族歴情報を正確に共有するためには、標準化された記載方法で家系図を作成する必要がある。国際的な家系図記載のために、米国遺伝カウンセラー協会(National Society of Genetic Counselors)が提唱している記載方法に準じることが望ましい。本記載方法については、2022年7月に14年ぶりの改訂版が発表された(J Genet Couns. 2022;00:1-11)。今回の改訂における特に重要なポイントは2点ある。1点目は、sex(生物学的性)とgender(社会的性)の違いに配慮をした記載方法が追加されたことである。2 点目は病的バリアントを持つ無症状の個体として、“発症前の病的バリアント保持者”と“無症候性保因者”が同一記号に集約されたことである。これらの内容を含め、家族歴聴取、家系図の作成とリスク評価について紹介をする。