講演情報

[ES2]遺伝性腫瘍症候群とがん診療 ~ゲノム情報は大事なパラメーターの1つ

吉田 玲子 (昭和大学 臨床ゲノム研究所)
わが国でも数年前から“ダイバーシティ(多様性)”という言葉が、一般社会や企業の中で推進されるようになりました。多様な背景を持った人々や価値観を包含し受容する社会で、そこから生まれる創造性や競争力が社会の力の源泉ともなるとして注目されています。疾病、特にがん診療において、多様性を作る1つのパラメーターがゲノム情報です。全てのがんはゲノムの異常で生じます。体細胞(腫瘍組織)と生殖細胞の両方のゲノム情報を包含し、考慮することで、より精密な個別化がん医療を目指すことが出来るというのが、がんゲノム医療、プレシジョンオンコロジーの戦略です。更に生殖細胞のゲノム情報は、発症前に診断されることにより、リスクを層別化した適切な予防医療へと繋がります。これらのがんゲノム・遺伝性腫瘍の診療はわが国でも既に一部保険診療で展開されてきています。また、ヒトは誰でも数個の遺伝子に生まれつき変化を持っていると言われています。がんだけではなく循環器・代謝・内分泌等、がん以外の疾病に関わるゲノムの情報も近年どんどん調べられる時代となりました。
本セッションでは、がんとゲノムの異常、がんと遺伝性腫瘍症候群、我が国の遺伝性腫瘍症候群診療体制、国民のがん教育と遺伝教育に焦点を当て、これからがんゲノムや遺伝性腫瘍症候群の診療に従事する方や基礎から学びたい方を対象に基礎から分かりやすくお伝えする予定です。わが国の最新のがん統計によると、生涯で男性の65.5%、女性51.2%が罹患し、年間約100万人以上が新たにがんと診断されています。国民の一般的な疾患の1つとなったがんの診療の中で、遺伝性腫瘍症候群へのアセスメントは遺伝の専門家だけではなく医療者の誰もがアセスメントを行えることが大切です。