講演情報
[ES5]周産期医療・生殖医療における遺伝学的検査 ~出生前遺伝学的検査と着床前遺伝学的検査~
○佐々木 愛子 (国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
周産期医療・生殖医療における遺伝カウンセリングは、臨床遺伝における全遺伝カウンセリングの中でも大きな部分を占める領域である。この領域の遺伝カウンセリングには、解析が実行可能かといった技術的な内容だけではなく、社会的側面や生命倫理的側面も大きく影響するため、総合的なバランス力が問われる。
この領域は近年大きな変化があった。まず、2015年ごろからの国内のNIPTの乱用を受け、厚生労働省子ども家庭局母子保健課より「出生前検査に対する見解・支援体制について」という通達が発出された。1999年の厚生科学審議会による「医師は積極的に妊婦に知らせる必要はない」としてきたわが国の方針を大きく方向転換するもので、「妊婦及びそのパートナーが、出生前検査がどのようなものであるかについて正しく理解した上で、(中略)判断ができるよう妊娠・出産・育児に関する包括的な支援の一環として、妊婦等に対し、出生前検査に関する情報提供を行うべきであること」と記されている。
もう一方の着床前遺伝学的検査に関しては、2018年の網膜芽細胞腫の病的バリアントをもつカップルからの申請を契機に “疾患の重篤性”の定義が問われることとなった。1998年の日本産科婦人科学会の「着床前診断に関する見解」以降、適応症例は“成人に達する以前に日常生活を強く損なう症状が発現したり生存が危ぶまれる疾患”であるという内規が20年近く準用されてきたが、2020~21年にかけ「PGT-M(重篤な遺伝性疾患に対する着床前遺伝学的検査)に関する倫理審議会」が開催され見直されることとなった。これにより、現在、適応拡大の可能性を残している。
出生前遺伝学的検査、着床前遺伝学的検査は、今までのように周産期管理や不妊治療にかかわる産婦人科医師だけで判断する時代ではなく、日本人類遺伝学会の会員であるすべての医師・医療関係者が対応し考えるべきテーマである。
この領域は近年大きな変化があった。まず、2015年ごろからの国内のNIPTの乱用を受け、厚生労働省子ども家庭局母子保健課より「出生前検査に対する見解・支援体制について」という通達が発出された。1999年の厚生科学審議会による「医師は積極的に妊婦に知らせる必要はない」としてきたわが国の方針を大きく方向転換するもので、「妊婦及びそのパートナーが、出生前検査がどのようなものであるかについて正しく理解した上で、(中略)判断ができるよう妊娠・出産・育児に関する包括的な支援の一環として、妊婦等に対し、出生前検査に関する情報提供を行うべきであること」と記されている。
もう一方の着床前遺伝学的検査に関しては、2018年の網膜芽細胞腫の病的バリアントをもつカップルからの申請を契機に “疾患の重篤性”の定義が問われることとなった。1998年の日本産科婦人科学会の「着床前診断に関する見解」以降、適応症例は“成人に達する以前に日常生活を強く損なう症状が発現したり生存が危ぶまれる疾患”であるという内規が20年近く準用されてきたが、2020~21年にかけ「PGT-M(重篤な遺伝性疾患に対する着床前遺伝学的検査)に関する倫理審議会」が開催され見直されることとなった。これにより、現在、適応拡大の可能性を残している。
出生前遺伝学的検査、着床前遺伝学的検査は、今までのように周産期管理や不妊治療にかかわる産婦人科医師だけで判断する時代ではなく、日本人類遺伝学会の会員であるすべての医師・医療関係者が対応し考えるべきテーマである。