講演情報

[IL1]What you see is what you get:構造生物学の最新の動向について

岩田 想 (京都大学大学院 医学研究科 分子細胞情報学)
本講演では、最近の構造生物学のトピックを演者の研究する膜タンパク質を中心に幅広い分野の研究者にわかりやすい形で紹介する。伝統的にタンパク質など生体高分子の立体構造の解明はX線結晶構造解析を用いて行われてきた。しかしながら近年、特に2017年のノーベル化学賞の受賞以降、低温電子顕微鏡を用いた単粒子解析が中心的な手法として台頭してきている。この手法は従来のような結晶化のステップを必要としないため、より幅広い複雑な生体高分子の構造解析に適している。本法を最近解析された例を中心に紹介する。また旧来のように結晶を使う手法で革新的な技術としてはX線自由電子レーザーを用いた時間分割構造解析があげられる。この手法を用いると、反応を起こしているタンパク質の動きなどをまるでアニメーションのように捉えることができる。もう一つ最近のトピックとしては AIを使い実験に頼らずに生体高分子の構造を決定する方法が挙げられる。これらの最新の話題を中心に現在構造生物学でどのようなことがわかるようになったかについて解説する。