講演情報

[LS6-1]地方における出生前検査の現状とこれから

天雲 千晶 (香川大学医学部附属病院 周産期科女性診療科)
本ランチョンセミナーでは、地方における出生前検査の現状と、当院における基幹施設登録~NIPT開始後の展望について紹介する。<br/>香川県の年間出生数は約6000人であり、当院は年間約700分娩を担う総合周産期母子医療センターである。開院以来、胎児表現型の評価として超音波診断に注力している。遺伝学的検査としては羊水検査を提供し、希望者に対しては限定することなく相談を受けてきた。羊水検査の受検理由は高齢妊娠が多いが、2013年にNIPTが国内に導入されて以降、羊水検査数は減少傾向にある。当院で行った羊水検査を後方視すると、受検理由を高齢に絞ったトリソミー陽性率は1.2%であり、NIPTコンソーシアムのトリソミー陽性率と相違ない結果であった。NIPTは非確定検査であるが、侵襲を伴う検査を回避できるという利点があり、地方でも高齢を理由にした羊水検査希望は明らかに減少している。一方、35歳未満の受検理由はNT肥厚や超音波検査異常が多く、トリソミー陽性率は7.5%と高齢妊娠の陽性率より高かった。またトリソミー以外の染色体数的異常や構造異常などを含めると検査陽性率は15%であった。出生前検査の選択肢が増えてはいるが受検理由や妊婦の背景などを考慮し適切に提供すべきであると考えている。<br/>これまで、県内にNIPTコンソーシアムの臨床研究参加施設は1施設のみであったため、NIPTへのアクセスが容易であるとは言い難い状況であった。2022年3月、日本医学会より「NIPT等の出生前検査に関する施設認証の指針」が発表され、これまでに比べて出生前検査の門戸が広げられたといえる。地方でも出生前検査についての社会的認知度は今後高まりをみるのではないかと思われる。地方のいち周産期センターとして、均てん化された周産期遺伝医療を提供する使命があると考え、この度新たに基幹施設登録を行なった。基幹施設としては一般的な出生前検査の提供に加え、複雑な事例への対応も求められるが、NIPT導入後も妊婦に寄り添った医療を提供する姿勢に変わりはない。