講演情報

[LS8-2]ファブリー病のスクリーニングによる早期診断

中村 公俊 (熊本大学大学院生命科学研究部小児科学講座)
ファブリー病では、これまで考えられていたよりも多くの患者が存在することが知られるようになった。また、酵素補充治療を早期に開始することで予後が改善することが明らかになってきた。ファブリー病はX連鎖性遺伝性疾患であるため、その診断や治療においては、十分な遺伝カウンセリングを求められることが少なくない。ファブリー病の早期診断には、症状を確認し、酵素診断や遺伝子診断へとつなげることが有用である。古典型ファブリー病では、小児期から手足の末梢の痛み、汗をかきにくい、角膜混濁、皮膚の盛り上がりのある被角血管腫などの症状が見られる。さらに思春期以降には、循環器症状、腎障害、脳血管障害などが明らかになってくる。また、遅発型の経過をとる場合には、小児期の症状はないか、あってもごくわずかであり、成人期以降に心不全や腎不全などの臓器障害があらわれる。女性では、ヘテロ接合体であるため、X染色体不活化の程度の違いによって、無症状から、心臓、腎臓などの単一臓器の障害や、古典型と同様の複数の臓器にわたる障害など、さまざまな病型を呈する。このように、ファブリー病の早期診断・早期治療のためには、これらの病型を理解したうえで診断を進めることが必要となる。近年、ファブリー病の早期診断のために、特定の臨床症状を基にしたハイリスクスクリーニングや、新生児全員を対象とする新生児スクリーニングが試みられている。スクリーニングによって発見された患者では、早期治療が開始されている。そして、診断にあたっては遺伝性疾患であることへの十分な配慮が求められる。遺伝子解析の結果から、家族内での発症や予後の予測などについて説明することも必要となる。ファブリー病の概要と早期診断について考えてみたい。