講演情報
[LS9]治療法のある骨系統疾患:診断と治療・管理のアップデート
○浅沼 秀臣 (北海道立子ども総合医療・療育センター 新生児内科・小児科(総合診療科))
低ホスファターゼ症(HPP)は組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)をコードするALPL遺伝子の変異によりTNSALP活性の低下をきたし、骨格系はじめ、呼吸器系、神経系、筋肉、関節、腎臓、歯牙など全身に多彩な症状が現れる遺伝性疾患である。<br/>HPPの治療薬として酵素補充療法(ERT)が発売開始され、7年が経過した。本セミナーでは特に、日本人に多いと言われる周産期型HPPを取り上げ、発売前には早期に亡くなっていたような周産期重症型の患者さんが、治療を通じて現在どのような生活を送り、どのような課題に直面しているかについて触れる。<br/>周産期重症型HPPの診療に関わっているのは、小児内分泌医/新生児科医になることが多いが、治療法のある骨系統疾患として、臨床遺伝の専門家にも現状を知って頂きたい。そして、HPPの遺伝カウンセリング時の正確な情報提供や心理社会的サポートのための参考として頂ければ幸いである。<br/>本セミナーでは、HPPの概要について触れた後、疾患管理方法に関して診療ガイドラインやモニタリングガイダンスを紹介する。治療法については、治験データに加え、海外から7年の長期データが報告されており、共有する。さらに、自身が経験した、けいれん発作が先行した周産期重症型HPPの症例(F310del/c.1559delT複合ヘテロ接合体)は3ヵ月齢からERTを開始し、現在9年間の長期投与中であり、その効果についての知見を得ている。本症例について、投与前後での骨のくる病様変化、胸郭の発達、呼吸への影響、運動発達(新版K式、遠城寺式、WISC-IV)、歯科症状について紹介し、これまでのあゆみと、今後の展望、現在の課題を共有したい。<br/>最後に、ERTの現状と長期投与で見えてきた課題についてまとめる。臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーの皆さんにとって、役立つ情報になれば幸いである。