講演情報

[O12-5]妊産婦へのアンケート調査とドイツの取り組みから検討した、出生前検査に関する行政機関の支援体制

森本 佳奈1,8, 山田 崇弘1,8, 菅野 摂子2,8, 佐野 敦子3, 池袋 真4,8, 坂本 美和4,8, 廣瀬 達子4,8, 佐村 修5,8, 清野 仁美6,8, 水谷 あかね4,8, 宮上 景子4,8, 吉橋 博史7,8, 小杉 眞司1, 関沢 明彦4,8, 白土 なほ子4,8 (1.京都大学 大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 医療倫理学・遺伝医療学分野, 2.埼玉大学ダイバーシティ推進センター, 3.東京大学 大学院 情報学環・学際情報学府, 4.昭和大学 医学部 産婦人科学講座, 5.東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座, 6.兵庫医科大学 精神科神経科学講座, 7.東京都立小児総合医療センター 遺伝診療部 臨床遺伝センター 臨床遺伝科, 8.厚生労働科学研究費補助金 健やか次世代育成総合研究事業「出生前検査に関する妊産婦等の意識調査や支援体制構築のための研究」研究班)
【目的】2021年のNIPT専門委員会報告書では、出生前検査の情報や支援は産科医療機関だけでなく、行政機関からも提供すべきとされた。妊産婦が行政機関に求めるものを明らかにするとともに、出生前検査に関する公的な支援が行われているドイツを参考に、行政機関の支援について検討することを目的とした。
【方法】18~44歳の妊娠24週以降、産後1年以内の女性を対象にアンケート調査を行い、関連するドイツの取り組みに関する文献やウェブサイトから情報収集した。本研究は、厚労科研「出生前検査に関する妊産婦等の意識調査や支援体制構築のための研究」の一部として行った。
【結果】3113人(妊婦2079人、褥婦1034人)のデータを解析した。74.7%が、出生前検査に関する情報をすべての、あるいは、希望する妊婦に提供すべきと答えた。それは、「出生前検査で胎児の病気を妊娠中に知っても、治せる病気でなければ不安になる」と答えたうち76.2%、「胎児に出生前検査でわかる病気が見つからなくても安心できない」と答えたうち78.3%と、受検に伴う不安を認識している集団においても高い割合を占めていた。情報提供や相談支援を行う産科医療機関や行政機関に対し、約90%が「妊婦の気持ちを尊重する態度」や「中立的な情報提供」を望む一方で、70%以上が担当者の意見を、半数近くが「事務的な情報提供」を求めていた。ドイツでは、訓練を受けたカウンセラーがカウンセリングマインドをもって支援しており、日本の保健師に求められる態度と共通していた。
【結論】回答者の多くは、情報提供を標準的に受け、自らがそれを選択できること、つまりinformed choiceを望んでいた。今後は、保健師の認識や課題、ドイツ等海外での取り組みを含め、行政機関の支援体制について検討を続ける必要がある。