講演情報
[O17-5]一般女性における情報通信端末を用いた遺伝性腫瘍リスク評価への意識調査
○瀬川 麻美1,2, 山口 園美2, 藤江 里衣子3, 佐藤 労4, 大江 瑞恵1 (1.藤田医科大学大学院 保健学研究科 保健学専攻 臨床検査学領域 遺伝カウンセリング分野, 2.聖隷福祉事業団 保健事業部 聖隷健康診断センター, 3.藤田医科大学医学部 医療コミュニケーション, 4.藤田医科大学 医学部 倫理学)
【背景と目的】遺伝性腫瘍では、予防や早期発見のために、主に家族歴からat risk者の評価をしているが、発症前の評価の機会は限られている。近年、ICTの普及に伴い、web上で様々な疾患のリスク評価が提供されており、遺伝性腫瘍啓発にも活用できると考えられる。他方、一般集団では、社会での家族歴等の遺伝情報の利活用に懸念があることも報告されている。本研究ではweb端末での遺伝性腫瘍一次リスク評価と提供時に配慮すべき事項を検討した。【方法】2022年3月に聖隷健康診断センターで婦人科検診を受診した女性853名を対象に、自己記入式調査票を用いた(有効回答回収率69.3%)。遺伝性腫瘍については「がんには遺伝性のものがある」「家族歴等からリスク評価する基準がある」ということのみ説明し、web上で無料のリスク評価ができる仮定で回答を得た。ロジスティック回帰分析で利用の意欲との関連因子を探索した。【結果と考察】解析対象(n=591)の平均年齢(SD)は49.8(11.7)歳で、75.8%が「web端末でのリスク評価を利用したい」と答えた。利用への意欲に影響する要因は「利便性の認知」「信頼感」「リスクを知るメリットの認知」が有意で、これらの認知を高める情報提供が利用促進につながる可能性が示唆された。「自身が罹患する可能性の認知」「リスクを知るデメリットの認知」などは有意な影響要因でなく、判定後のフォローアップを想定した事前の情報提供は必要と考える。また、利用への意欲は年齢、世帯年収と有意な関連がみられ、若年層の利用が特に見込まれる一方、経済状態を考慮した社会的な対策が必要と考えられる。潜在するat risk者が遺伝性腫瘍を認知する機会として、web端末は有用と考えられる。一般集団への遺伝教育は必須だが、第一目的であるスクリーニングに注目して情報提供内容のバランスを検討する必要がある。