講演情報

[O2-4]骨髄不全や四肢の先天異常を呈するMECOM異常症での表現型に関連しうるメカニズム

新堀 哲也, 永井 康貴, 阿部 太紀, 青木 洋子 (東北大学 大学院医学系研究科 遺伝医療学分野)
MECOM(MDS1 and EVI1 complex locus)は転写制御因子であるMDS1-EVI1とEVI1をコードする遺伝子である。EVI1はN末側に7つのZinc finger(ZF)モチーフを持つN-ZFドメインと、C末側に3つのZFモチーフを持つC-ZFドメインを持つ。EVI1は各ZFドメインを介してDNAやタンパクとの結合を行い、転写を制御しているとされる。我々は2015年に、無巨核球性血小板減少症を伴う橈尺骨癒合症(RUSAT)患者3人においてEVI1のヘテロ接合性のミスセンス変異を同定し、新規原因遺伝子として報告した。他のグループからもタンパク短縮が予想される変異を含む様々なMECOMバリアントが骨髄不全患者を中心に報告されている。さらに骨髄不全を持たない非症候性RUS家系にもMECOMバリアントの報告があり、MECOMバリアントを持つ個人の表現型は幅広いことが示されてきているが、表現型に関連するメカニズムは不明な点が多い。我々は最近、橈尺骨癒合症(RUS)や骨髄不全を含む様々な表現型を持つ2家系にMECOMのインフレームの欠失/挿入を生ずるスプライスバリアントを同定し、うち1家系では末梢血でコピー数不変LOHによる変異アレル割合の低下を検出し、表現型に関わりうる新たなメカニズムを同定した。また、これまでRUSを持つ患者においてはZF8またはZF9モチーフにバリアントが同定されており、ZF8は既報でオリゴマー形成にかかわると示唆されていることから、我々はAlphafold multimerを用い、EVI1のダイマー形成の立体構造予測を行った。その結果、C-ZFドメイン同士が隣接する形でのダイマー形成が予測された。転写調節におけるダイマー形成の役割は明らかではないものの、変異によるダイマー形成の異常がRUSの発症に関連する可能性が考えられた。