講演情報
[O2-5]日本人集団を対象としたゲノムワイドメタ解析による血漿アミノ酸濃度関連SNPの同定
○荒川 茉南1, 奥村 祐斗1, 伊藤 友哉1, 村下 公一2, 中路 重之3, 中杤 昌弘1 (1.名古屋大学大学院医学系研究科 実社会情報健康医療学講座, 2.弘前大学 健康未来イノベーション研究機構, 3.弘前大学大学院 医学研究科 社会医学講座)
【背景】異常な代謝物濃度は、疾患の機序の理解や臨床のバイオマーカー特定に貢献する。本研究では、アミノ酸のような血中の代謝物と遺伝子多型との関連を明らかにするため、弘前市の住民を対象に血中アミノ酸濃度のゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し、先行研究(Koshiba et al, Commun Biol, 2020)である東北メディカルメガバンク(ToMMo)の結果と統合したゲノムワイドメタ解析を実施した。本解析を通して、日本人における新規アミノ酸濃度関連領域の探索を行った。【方法】対象集団の内一つは、岩木健康増進プロジェクト健診(青森県弘前市岩木地区健診)に参加した1415人である。もう一つははKoshiba et al.で報告された1008人である。本解析は6種類のアミノ酸の血中濃度を対象とした。各形質に対しBoxCox変換を適用し関連解析を実施した。共変量には年齢とBMIを使用した。得られた結果をMETALによって統合した。【結果】メタ解析の結果、全アミノ酸を通して合計8か所の領域がゲノムワイド有意水準(1.0×10 -8)に到達した。このうち、Koshibaらの研究で同定された領域に加え、新たに2p23.4,2q34,16q23.2の同定に成功した。これら3領域は、欧米人を対象とした研究でも同様のアミノ酸との関連が報告されていた。3領域の内一つはグリシンと関連し、16q23.2にあるrs1563077―近縁にGCSH 遺伝子―を含む領域だった。もう二つはセリンと関連し、2p23.4にあるrs1260326―GCKR の非同義置換遺伝子―を含む領域と、2q34にあるrs55932961―近縁にCPS1 遺伝子―だった。【結論】本研究により、これまで日本人を対象とした先行研究では同定されていなかった領域を3か所同定できた。これらの知見は今後の代謝物研究の重要な知見となり得る。