講演情報
[O20-4]当院における遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)に対するリスク低減卵管卵巣切除(RRSO)の現状と課題
○久保 裕子1, 西川 隆太郎1,2, 武田 恵利1,2, 田口 育1,2, 矢野 好隆1, 佐藤 玲1, 塩澤 文子1, 松本 洋介1, 小川 紫野1, 間瀬 聖子1, 佐藤 剛1, 鈴森 伸宏1, 杉浦 真弓1 (1.名古屋市立大学 産科婦人科学, 2.名古屋市立大学病院 臨床遺伝医療部)
【目的】HBOCはBRCA1もしくはBRCA2生殖細胞系列遺伝子(gBRCA1/2)の病的バリアントを原因とする、乳癌や卵巣癌の易罹患性症候群である。卵巣癌は早期発見のための有効なサーベイランス方法が確立されておらず、HBOCの予後を改善する最も確実な方法としてRRSOが知られている。当施設は2014年よりHBOCに対するRRSOを行っていたが、2020年4月にRRSOが保険収載されて以降施行例は増加傾向である。今回当院におけるHBOC診断後のRRSOおよび関連癌サーベイランスの現状について後方視的に検討したので報告する。【方法・結果】2010年12月より2022年3月の期間に当施設でgBRCA1/2遺伝学的検査を367例の女性に行い、gBRCA1/2病的バリアントを89例で認めた。そのうちgBRCA1病的バリアントが39例、gBRCA2病的バリアントが50例、詳細不明が1例あった。また、病的バリアント陰性が264例、未確定変異(VUS)が12例あった。gBRCA1/2病的バリアント陽性例から詳細不明を除いた88例のうち、遺伝学的検査施行時における乳癌既発症者は71名、卵巣癌既発症者は25名であった。乳癌と卵巣癌の重複癌は6例みとめ、乳癌精査中に卵巣癌が見つかった1例を除き、いずれも乳癌を先に発症していた。また、RRSOを施行あるいは今後施行予定は37例で、RRSOを施行した26例のうち、1例でオカルト癌を認めた。全例に対し術後の定期フォローを行っており、腹膜癌の発症や、転移再発を認めていない。【考察】卵巣癌未発症でRRSO未施行例は38例あり、RRSOを予定していない者は27例だが、数ヶ月~半年毎の定期フォローにより、経膣超音波、腫瘍マーカー測定を行っている。乳癌サーベイランスに関しては乳癌既往の有無により異なるが、多くは乳癌既往症例のため乳腺外科での定期フォローアップを行っている。今後、関連癌のサーベイランスについてはそれぞれの施設において、診療科横断的な対応を検討してゆく必要があると考えられた。