講演情報
[O21-1]包括的がんゲノムプロファイリング検査で病的バリアントが検出されずBRACAnalysisTMで検出された遺伝性乳癌卵巣癌症候群の2例
○久我 亜沙美1, 荻原 眞帆1, 吉岡 耕平2, 小澤 南1,3, 杉下 陽堂1,4, 鈴木 由妃1,4, 本吉 愛1,5, 右田 王介1,3,6, 大原 樹7, 小島 康幸5, 井本 清美8, 計良 貴之9, 佐藤 知雄4,8,14, 野呂瀬 朋子10, 柳澤 信之10, 大池 信之10, 砂川 優8,11, 山本 博幸12,13, 小池 淳樹10, 山野 嘉久4,8,14, 津川 浩一郎1,5 (1.聖マリアンナ医科大学病院 遺伝診療部, 2.聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科, 3.聖マリアンナ医科大学 小児科, 4.聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター, 5.聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科, 6.聖マリアンナ医科大学 臨床検査学, 7.聖マリアンナ医科大学 産婦人科, 8.聖マリアンナ医科大学病院 ゲノム医療推進センター, 9.聖マリアンナ医科大学病院 薬剤部, 10.聖マリアンナ医科大学 病理診断科, 11.聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学, 12.聖マリアンナ医科大学 バイオインフォマティクス学, 13.聖マリアンナ医科大学 消化器内科, 14.聖マリアンナ医科大学 脳神経内科)
【背景】次世代シークエンサーを用いた包括的がんゲノムプロファイリング検査(CGP)は、複数の遺伝子の塩基配列が解析可能である。しかし、変異アレルの含有率が非常に少ない場合や解析対象外の領域に存在するバリアント、遺伝子再構成等については、検出できない場合や報告されない場合もある。今回、CGPでは生殖細胞系列由来の病的バリアントが検出されず、BRACAnalyisTMで検出された2例について報告する。【症例】症例1:39歳女性。乳癌。家族歴に胆管癌2名、子宮体癌1名あり。CGPを受ける前にBRACAnalyisTMにてBRCA1遺伝子のイントロン部位における病的バリアントが検出されていたが、CGPでは、生殖細胞系列由来の病的バリアントは検出されなかった。症例2:52歳女性。卵巣癌。父方家系に乳癌2名、食道癌・胃癌・肺癌各1名、母方家系に卵巣癌・肺癌・直腸癌各1名あり。CGPでは、生殖細胞系列由来の病的バリアントは検出されなかった。しかし、エキスパートパネルにて、家族歴にも若年発症の卵巣癌があることからHBOCの可能性が考慮され、BRACAnalyisTMを実施したところ、BRCA1遺伝子にエクソン単位の欠失が検出された。【考察】遺伝性腫瘍関連遺伝子に病的バリアントが検出された場合、有効な治療やサーベイランスに結びつく可能性がある。とりわけ、BRCA1/2遺伝子における病的バリアントを有することが明らかになった場合、患者本人や血縁者の治療や健康管理に有益な所見となる。そのため、ACMGガイドラインやAMED(小杉班)のゲノム医療における情報伝達プロセスに関する提言において開示が推奨されている。しかし、次世代シークエンサーを用いたCGPでは、解析対象外の領域におけるバリアントや大規模な遺伝子再構成等は検出されない場合がある。CGPの限界を理解した上で、病歴、家族歴も含めて慎重に検討する必要があり、生殖細胞系列を対象とした別の遺伝子解析の実施を考慮する意義があると考えられる。