講演情報

[O22-2]HBOC地域連携の現状と課題

菅原 宏美1, 板垣 あい1, 向井 めぐみ1, 植野 さやか1,2, 矢野 紘子1,3, 廣利 浩一1,4, 澁谷 剛志1,3, 尾上 琢磨1,5, 境 秀樹1,5, 河村 美由紀1,5, 森田 充紀1,5, 田村 和朗1, 松本 光史1,5 (1.兵庫県立がんセンター 遺伝診療科, 2.兵庫県立がんセンター 研究部, 3.兵庫県立がんセンター 婦人科, 4.兵庫県立がんセンター 乳腺外科, 5.兵庫県立がんセンター 腫瘍内科)
【背景と目的】当院では、院外患者を対象とした遺伝カウンセリング(GC)を2019年に開始した。その後院外患者の受入数は徐々に増加し、ニーズも多様化している。中でも件数の多いHBOCのGCを通じて、HBOC地域連携の現状と課題について検討する。【方法】2019年5月から2022年5月の間に、地域連携室を通じてGCに紹介された92人のうち、HBOCに関連するGCを行った82人について、来談の経緯、目的、GC後の対応を診療録から調査した。【結果】82人のうち、HBOCの遺伝学的検査(GT)検討目的で来談したのは50人(男性1人、女性49人、年齢中央値48.5歳)で、うち3人はコンパニオン診断(CDx)目的の検査希望、また1人は卵巣癌のCDx(myChoice)により腫瘍組織で病的バリアント(PV)が検出され紹介となった。他院でGTを受けてPVが検出され、リスク低減手術(RRS)の相談目的で来談した方は24人(全員女性、年齢中央値50歳)で、うち20人(83%)が手術を希望した。PV検出後に疾患説明を希望してこられた方は8人(男性3人、女性5人、年齢中央値62歳)で、うち5人はCDxにより診断されていた。当院で検査を受けPVが確認された7人を含むPV保持者39人37家系の中で、当院で血縁者診断を行ったのは12家系(32%)23人で、16人のPV保持が確認され、うち14人は乳癌・卵巣癌未発症であった。【考察】CDxやHBOC保険診療の浸透により、院外からのGCニーズは増加・多様化していくと思われる。兵庫県では、乳癌のCDxが導入された2018年からがん診療連携協議会のワーキンググループでHBOC診療連携のスキームを作って運用しており、当院は連携先病院の一つである。HBOC診断やPV保持者のRRSのニーズには対応できている一方、RRS後のサーベイランス、未発症者のサーベイランス、膵癌のサーベイランスなどでの連携体制の充実は今後の課題である。また接触回数が限られる院外PV保持者の血縁者をGCにつなげることももう一つの課題と考える。