講演情報
[O22-3]がん遺伝子パネル検査でPositive Biomarkerとして検出されたRAD51Dのバリアントが生殖細胞系列でVUSと判定された一例
○加藤 芙美乃1, 山本 英喜1,2, 河内 麻里子1,3, 浦川 優作2,4, 植野 さやか2, 十川 麗美1, 二川 摩周1, 平沢 晃1,2 (1.岡山大学病院 臨床遺伝子診療科, 2.岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 臨床遺伝子医療学, 3.独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター 乳腺外科, 4.神戸市立医療センター中央市民病院 腫瘍内科)
【背景】がん遺伝子パネル検査では、腫瘍組織の体細胞バリアントが検出されると同時に、生殖細胞系列が疑われる病的バリアント(PGPV)が検出される場合がある。PGPVの確認検査を実施することで、生殖細胞系列病的バリアントの確定が可能となる。今回、がん遺伝子パネル検査においてPositive Biomarkerで検出されたRAD51Dのバリアントの確認検査を施行した症例で、生殖細胞系列の確認検査ではVUSと判定された例を報告する。【症例】67歳男性。65歳時に前立腺癌と診断。家族歴は、父が高齢で前立腺癌と診断、母方従姉が50代で乳癌と診断。当院泌尿器科よりがんゲノム医療外来に紹介となり、FoundationOne CDx施行。RAD51D(NM_001142571) c.184C>T(p.Q62*)がPositive Biomarkerとして検出された。VAFは48.6%、ClinVar等のデータベースでは報告はなかったが、バリアントの集団頻度が0.0001でナンセンスバリアントであることから、病的バリアントと想定された。その後ご本人が遺伝外来に来談し、確認検査を実施したところ、本バリアントが生殖細胞系列由来であることが確認できたが、判定はVUSであった。(RAD51D(NM_002878) c.263+1503C>T;VUS) この結果から、本人や血縁者の健康管理につなげることは難しい点や今後病的意義変更となった場合の対応等を伝え、引き続きフォローアップの方針となった。【考察】本症例においては、バリアントがNM_001142571ではエクソン、NM_002878ではイントロンに存在しており、がん遺伝子パネル検査と遺伝学的検査で使用される参照配列の違いから、バリアントの解釈が異なったことが考えられた。バリアントの解釈は、サーベイランスや血縁者のリスク評価などの今後の方針にも関わってくるため、確認検査施行前に、より正確なバリアント解釈が求められるが、困難な例もある。バリアント解釈においては、参照配列も含め、様々なデータベースから検討を行うことが必要である。