講演情報

[O22-5]BRCA1/2病的バリアント陰性遺伝性乳癌卵巣癌症候群疑い患者に対する遺伝子パネル解析

中原 万里子1,2, 牛尼 美年子3, 田辺 記子1, 後藤 政広3, 渡辺 智子1, 小高 陽子3, 小田 智世1, 坂本 裕美3, 谷村 一輝4, 張 萌琳1, 平田 真1, 菅野 康吉1,5, 吉田 輝彦1,3 (1.国立がん研究センター中央病院 遺伝子診療部門, 2.国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科, 3.国立がん研究センター研究所 臨床ゲノム解析部門, 4.国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科, 5.公益財団法人佐々木研究所附属杏雲堂病院 遺伝子診療科)
【目的】乳癌・卵巣癌の易罹患性関連遺伝子としてBRCA1/2が最も高頻度であるが、他にも多数の関連遺伝子が報告されている。今回、当院遺伝相談外来を受診した乳癌または卵巣癌罹患例で、事前の生殖細胞系列または体細胞BRCA1/2遺伝子関連検査(以下BRCA検査)陰性であった症例のうち、研究として同意取得後に遺伝性腫瘍関連生殖細胞系列147遺伝子パネル解析(NOP_FC)を行った症例におけるBRCA1/2以外の関連遺伝子の病的バリアント検出状況を明らかにする。
【方法】2004年4月から2022年2月までに当院遺伝相談外来を受診した乳癌または卵巣癌罹患例のうち、BRCA 検査陰性確認後にNOP_FCを行った症例について診療録を用いて後方視的に検討した。
【成績】当院遺伝相談外来を受診した症例は、乳癌罹患例608例、卵巣癌罹患例114例であった。BRCA検査を行った症例は、乳癌罹患例439例、卵巣癌罹患例103例で、乳癌罹患例でBRCA1 病的バリアント検出例が55例(12.5%)、BRCA2 病的バリアント検出例が70例(15.9%)であった。卵巣癌罹患例でBRCA1 病的バリアント検出例が40例(38.8%)、BRCA2 病的バリアント検出例が14例(13.6%)であった。BRCA 検査陰性例のうち、乳癌135例及び卵巣癌4例に対してNOP_FCを行った。乳癌卵巣癌関連遺伝子病的バリアント検出例は7例(5.0%)であり、すべて乳癌罹患症例であった。検出された関連遺伝子と症例数は、RAD51Dが4例、PALB2が2例、BARD1が1例であった。RAD51D 病的バリアント検出例1例では、院内倫理委員会での承認後、リスク低減卵管卵巣摘出術(自費診療)を行った。
【結論】BRCA1/2 病的バリアント陰性乳癌罹患症例に対して追加検査を行ったところ、少数ではあるがBRCA1/2以外の乳癌卵巣癌関連遺伝子に病的バリアントが検出された。BRCA1/2 病的バリアントを検出しなかった例においても、追加検査によってその後の予防的切除やサーベイランスに有用な情報が得られる可能性がある。