講演情報
[O29-5]Adaptive Samplingを用いたリピート伸長疾患の迅速かつ包括的な診断方法
○輿水 江里子1, 宮武 聡子1,2, 藤田 京志1, 土井 宏3, 水口 剛1, 田中 章景3, 松本 直通1 (1.横浜市立大学 医学部 遺伝学, 2.横浜市立大学 附属病院 遺伝子診療科, 3.横浜市立大学 医学部 神経内科学・脳卒中医学)
リピート伸長病の同定には、診断から予想される遺伝子座に対して、Flanking PCR法、Fragment解析、Repeat-primed PCR法、サザンブロッティング法などが施行されている。我々はこれらの従来法に代る、より迅速で簡便な診断法の開発を行った。目的領域を濃縮するためのサンプル前処理を必要としない、ソフトウェアによるターゲットシーケンシングであるAdaptive Samplingを用いたロングリードシーケンス法(Oxford Nanopore Technologies)に着目した。解析系の構築には、原因となる病的リピート伸長が異なる遺伝子座に同定された、様々な塩基のリピート伸長を有する神経・神経筋疾患の患者12例をポジティブコントロールとして用いた。ターゲット領域は既知の病的リピート伸長遺伝子座である59箇所を選択した。12例における平均depthは28.2xで、全ての対象遺伝子座において解析可能なdepthが保たれてた(4.7x~70.7x)。リピート伸長の検出はTandem-genotypesを用いた。リピート伸長の変化を対象遺伝子座毎にランク付けした結果、10の責任遺伝子座はランク1位となり、2つの責任遺伝子座はランク2位であった。ランクが2位となった遺伝子座では、1位に1)病的ではないリピートシーケンスが伸長した多型を検出した。 2)潜性遺伝(劣性遺伝)形式である遺伝子座の1アレルにのみ病的リピート伸長を認めた。いずれの場合も、検出されたリードを確認することで容易に判定することが可能であった。
ナノポアシーケンシングによる一連の解析は(DNA調整からデータ解析まで)、約4日で完了することが可能である。また、Nuclease flushにより検体を追加した場合、1フローセルで2検体まで結果を得ることに成功、コストを半減できる。以上の結果から、本手法は従来法に比べて、迅速性、正確性、網羅性において優れていると考えられる。
ナノポアシーケンシングによる一連の解析は(DNA調整からデータ解析まで)、約4日で完了することが可能である。また、Nuclease flushにより検体を追加した場合、1フローセルで2検体まで結果を得ることに成功、コストを半減できる。以上の結果から、本手法は従来法に比べて、迅速性、正確性、網羅性において優れていると考えられる。