講演情報

[O31-5]日本人脳動脈瘤家系の全エクソーム解析による新規感受性遺伝子の同定

赤川 浩之1,2, 前川 達哉2,3, 恩田 英明2,4, 糟谷 英俊2 (1.東京女子医科大学 総合医科学研究所, 2.東京女子医科大学 足立医療センター 脳神経外科, 3.亀田総合病院 脊椎脊髄外科, 4.甲府脳神経外科病院)
【目的】家族性脳動脈瘤の家系を収集してきなかで、3世代にわたって7人の患者を生じた大家系に注目し、感受性遺伝子の特定を試みた。
【対象・方法】本家系の罹患者4人・非罹患者3人に全エクソーム解析を行った。罹患者で共有される有害なレア・バリアントについては変異機能解析を行い、さらに追加患者500例、対照323例を用いてレア・バリアント関連解析も行った。
【結果】罹患者4人全員で共有された2個の有害なバリアントに着目した。一方はNPNT遺伝子のスプライス部位c.1515+1G>Aで、minigene assayにより第10エクソンのskippingを来すことが確認された。もう一方はCBY2遺伝子の非同義置換p.Pro83Thrで、赤色蛍光タグによる生細胞イメージングにより細胞質内での異常凝集が確認された。さらにCBY2全域でのレア・バリアント関連解析では、3つの有害なバリアント(p.Arg55His、p.Pro83Thr、p.Leu192Arg)が患者特有に検出され有意な関連を示した(患者合計8/501、対照合計0/323、P=0.026)。
【考察】NPNTがコードする細胞外マトリクスNephronectinは既に血管内皮機能や血管新生に関わる分子であることが知られている。一方、CBY2(Chibby family member 2)はこれまで疾患との関わりが報告されていない新規分子であったが、免疫組織学的検討で脳血管平滑筋に発現していることを確認した。本家系ではNPNTとCBY2の異常がそれぞれ脳血管内皮および平滑筋細胞の機能障害を惹起し、脳動脈瘤の発生に寄与すると考えられた。今後、脳動脈瘤を多発する家系の分析データを蓄積していくことで、脳動脈瘤の高度な座位異質性や多因子構造が解明されていくだろう。(PLoS One. 2022 Mar 17;17(3):e0265359.)