講演情報

[O33-4]一般病院におけるLinuxコマンドを用いたゲノム配列情報へのバッチアノテーション付与のための基盤整備の経験

安田 純1, 小川 真紀2, 虻川 大樹2 (1.宮城県立がんセンター 研究所, 2.宮城県立こども病院)
次世代シーケンサー(NGS)の出現とそれによる膨大なゲノム情報に対して、専門研究機関でなくとも属性情報付与(アノテーション)が求められることが増加してきている。ウエブブラウザなどでの手入力での情報収集はerror proneであり、一つ一つであることから効率も悪い。またそうした解析情報サービスの多くは、挿入欠失配列は不可とかイントロン領域は不可など制限も多い。今回専門研究機関ではない宮城県立こども病院において、AnnovarやInterVarをはじめとするコマンド入力で複数のゲノム情報に属性情報付与(バッチアノテーション)を可能とする基盤整備を経験したので報告する。まず一般市中病院においてはNGS解析の最終結果であるVCFファイルやさらにそこから必要な情報のみを抽出したテキストファイルのデータに対してアノテーションを付与し、結果をエクセルで閲覧したり、ワードなどで編集したりすることが求められている。バッチアノテーションに用いるツールは主としてLinux上で動作するので、Linuxを運用できる環境を整備する必要があった。販売されているPCはWindowsマシンが多く、Linuxと両立するには仮想マシンの導入が必須である。従来の仮想マシンはホストマシンと仮想マシンとの関係が一般の医療スタッフにはなじみにくい形式であることが難点であった。2019年ころからマイクロソフト社がWSL2というWindowsオペレーティングシステムと相性の良い互換レイヤーソフトウエアを提供し始めたので、こちらにUbuntuを導入するのを基本戦略とし、実解析はノートパソコンで十分解析可能と判断した。本発表では導入時の各種トラブル、14KJPNなど日本人の遺伝医学上有用な情報のAnnovarでの活用法、認定遺伝カウンセラーが自由にこうしたツールを活用できる環境構築の意義について検討する。