講演情報
[O4-1]BRCA1バリアントのClinical Significanceとタンパク質相互作用情報との相関解析
○工藤 美紗絵1, 三宅 秀彦1,3, 佐々木 元子1,3, 神原 容子3, 由良 敬2,3 (1.お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻遺伝カウンセリングコース, 2.人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻生命科学コース, 3.お茶の水女子大学ヒューマンライフサイエンス研究所)
【背景】BRCA1の病的バリアントは遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の原因とされる。遺伝学的検査でHBOCと診断された場合、定期的なサーベイランスや予防的手術でがんのリスクを低減できる。しかし遺伝学的検査ではVariant of Uncertain Significance(VUS)の結果が出る可能性があり、このような曖昧な結果を受け取ったクライエントは混乱や不安を抱くとされる。VUSを減らすことは遺伝学的検査の有用性を高めることにつながる。【方法】BRCA1と相互作用して生体内で複合体を形成するタンパク質をデータベースSTRINGおよび文献から抽出し、これらのバリアントを解析した。臨床的意義が既知のバリアントについて、バリアントに関する様々なパラメータと臨床的意義との関係性を調べた。野生型とバリアントのアミノ酸残基の変化に関して、変異前後のアミノ酸残基の疎水性度や分子量を表す複数のパラメータの差と臨床的意義の回帰分析を行なった。バリアントの位置をタンパク質の表面・内部・他のタンパク質との界面に分類してこの質的変数と臨床的意義の関係を解析した。BRCA1と他のタンパク質の界面に生じたバリアントについて、相互作用するアミノ酸残基の組み合わせと臨床的意義の関係を調べた。【結果・考察】BRCA1と直接相互作用するタンパク質を10個、別のタンパク質を介して相互作用するタンパク質を38個同定した。アミノ酸残基の疎水性度を示すいくつかのパラメータが臨床的意義に影響を与えること、タンパク質立体構造におけるバリアントの位置、およびタンパク質界面のアミノ酸残基の組み合わせが臨床的意義と関係することがわかった。これらの関係を臨床的意義が既知のバリアントで検証し、現在VUSとされているバリアントの臨床的意義を予測しVUSを減らすことができることが示唆された。