講演情報

[O4-5]全ゲノム解析データを用いたKIRハプロタイプ推定手法の開発と人種間KIR多型の比較解析

森田 真梨1, 川口 修治1, 稲富 雄一1, 川口 喬久1, 進藤 岳郎2, 高折 晃史2, 松田 文彦1 (1.京都大学大学院医学研究科 附属ゲノム医学センター, 2.京都大学大学院医学研究科 血液腫瘍内科学)
キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)はヒト白血球抗原(HLA)との会合によりNK細胞にシグナルを伝え、自然免疫を制御する。17種類のKIR遺伝子のコピー数とアレルの種類は個人間で大きく異なる。このKIRハプロタイプの違いが様々な疾患や臓器移植の治療効果と関連することが近年明らかになっている。KIRアレルの同定にはターゲットシーケンスが用いられてきたが、カバレッジの均質化が困難なことや多型による低収量PCRの存在によりコピー数推定精度が低いという問題がある。また遺伝子間の相同性が高く、高精度のアレルタイピング手法が求められている。本研究では全ゲノム配列解析(WGS)を用いてKIR遺伝子のコピー数、アレル、ハプロタイプの推定手法および融合遺伝子検出法を開発した。WGSのカバレッジはターゲットシーケンスと比べて低いが、全遺伝子間で均質に得られる利点がある。またHLA領域の配列が同時に得られるため費用対効果に優れる。本手法でははじめに融合遺伝子を検出し、その情報を考慮してコピー数を推定した。得られたコピー数を基にKIRアレルをタイピングした。タイピング手法にはHLA用に開発したHLA-HDを改良することで、高精度な推定を試みた。最後に推定したコピー数とアレルを基にハプロタイプを同定した。開発手法を1000 Genomes Project検体のうちカバレッジ7.5以上のWGS 2627例に適用し、KIRアレルとハプロタイプを推定した。アレルタイピングには2476例の全エクソーム解析データを含め、精度向上を試みた。推定結果を一部の既知のタイピング結果と比較したところ、約90%の一致率となり、融合遺伝子となるアレルも存在した。複数の人種での過去研究で得られたアレル分布との類似性も得られた。人種間におけるハプロタイプの分布の違いを明らかにし、複数の新規ハプロタイプの同定にも成功した。本手法をこれまで解析してきたWGSデータに適用することで、KIR多型の臨床解析に貢献できる。