講演情報

[O5-2]二次性急性骨髄性白血病発症を契機にがん遺伝子パネル検査および患者由来皮膚線維芽細胞培養にて診断したLi-Fraumeni症候群の1例

神原 悠輔1, 福田 令2, 峯村 友樹1, 奈邊 愛美1, 菊地 尚平1, 和田 暁法1, 牧野 輝彦2, 仁井見 英樹2, 林 龍二3 (1.富山大学附属病院 血液内科, 2.富山大学附属病院 遺伝子診療部, 3.富山大学附属病院 臨床腫瘍部)
【症例】40歳代, 男性. X-12年前に左大腿悪性線維性組織球腫(MFH)を発症し, 前医で切除術を施行. 以後,右肺転移および局所再発にて切除術, 術後放射線療法を施行. X-3年前に左原発性肺癌にて切除術を施行. 当科紹介4ヶ月前にMFH局所再発のため, 当院整形外科へ紹介. 局所手術後, 術後化学療法導入時に末梢血中に芽球出現を認められ, 当科紹介. 骨髄検査で芽球を30.4%認め, 二次性急性骨髄性白血病と診断した. MFHに対する治療選択目的および若年での肉腫発症や濃厚ながん家族歴からLi-Fraumeni症候群(LFS)を疑い, MFH検体を用いてOncoGuideTM NCC オンコパネルシステムを提出した. なお提出時の末梢血中には14%の芽球残存を認めた.腫瘍組織では治療適応のある有意な変異を認めなかったが, 生殖細胞系列バリアントとして, TP53遺伝子にミスセンスバリアント(c.646G>T,(p.V216L) バリアントアレル頻度59.8%)を同定した. 当該バリアントは公的データべース等を用いて病原性と評価し、小杉班提言から二次的所見の開示対象と判断された. 血中に芽球が存在していたため, TP53バリアントの体細胞モザイクの可能性を完全には否定できず, 患者・家族へ十分な遺伝カウンセリングを実施の上, 皮疹出現時に施行した皮膚生検検体より, 患者由来皮膚線維芽細胞を培養し, 同バリアントの確認検査を施行した. その結果, 同バリアントを認め, またChompretおよび古典的LFS診断基準を満たすことから, 真の生殖細胞系列バリアントを有するLFSと診断した. 【考察】LFSは常染色体顕性遺伝形式を呈する遺伝性腫瘍であるが, 造血器腫瘍はコア腫瘍ではなく, 特に成人では稀である. がん遺伝子パネル検査において末梢血中に芽球が存在する場合の生殖細胞系列バリアントの解釈については議論の余地がある. 芽球由来もしくは体細胞モザイクの可能性を排除し, 正確に診断するためには,本症例のように皮膚線維芽細胞由来での確認検査に進むべきである.