講演情報

[O5-3]当院の網膜芽細胞腫患者におけるRB1遺伝学的検査結果の検討

渡辺 智子1, 牛尼 美年子1,2, 田辺 記子1, 後藤 政広1,2, 小田 智世1,3, 小高 陽子2, 張 萌琳1, 青柳 一彦2, 坂本 裕美1,2, 谷村 一輝4, 中原 万里子5, 平田 真1,6, 菅野 康吉1,7, 鈴木 茂伸8, 吉田 輝彦1,2 (1.国立がん研究センター中央病院 遺伝子診療部門, 2.国立がん研究センター研究所 臨床ゲノム解析部門, 3.国立がん研究センター中央病院 臨床検査科, 4.国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科, 5.国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科, 6.国立がん研究センター研究所 分子病理学研究分野, 7.公益財団法人佐々木研究所附属杏雲堂病院 遺伝子診療科, 8.国立がん研究センター中央病院 眼腫瘍科)
【目的】網膜芽細胞腫では、両眼性のほぼ全例、片眼性の約10~15%に生殖細胞系列のRB1遺伝子の病的バリアントを認めると報告されている。当院の遺伝外来を受診した網膜芽細胞腫患者のうち、RB1遺伝子の遺伝学的検査を受けた症例について病的バリアント検出状況と特徴を明らかにする。
【方法】1998年~2022年2月までに当院遺伝相談外来を受診した網膜芽細胞腫患者のうち、RB1遺伝子の遺伝学的検査を受けた症例について診療録を用いて後方視的に検証した。RB1遺伝子の遺伝学的検査はシークエンス法・MLPA法・FISH法の3種類が現在は保険収載されているが、研究もしくは保険診療で上記の解析方法の全部もしくは一部が実施されていた。
【結果】当院遺伝相談外来を受診して遺伝学的検査を希望された発端者は213家系であった。現時点の解析では、RB1遺伝子の病的バリアントを検出した家系は120家系(56%)、VUS・未確定が5家系(2.4%)、病的バリアントを検出しなかった家系は88家系(41%)であった。両眼性/片眼性での病的バリアント検出率は、両眼性では89%(105/118例)、片眼性では16%(15/95例)であった。バリアントの種類は、FISHまたはMLPAで検出された染色体またはエクソン単位の欠失・重複(CNV)が19例(16%)、一塩基バリアント(SNV)および挿入・欠失(short indel)が101例(84%)であった。
【結論】網膜芽細胞腫患者で遺伝学的検査を受けた症例のうち、両眼性・片眼性それぞれの病的バリアントの検出率は、先行研究と類似していることが示された。遺伝学的検査を検討する際の遺伝カウンセリングにおける情報提供の一助とすべく、更なる検証を進める。