講演情報

[O5-4]遺伝子バリアント部位から見たHBOC臨床像の特徴

植野 さやか1, 板垣 あい2, 菅原 宏美2, 向井 めぐみ2, 澁谷 剛志3, 矢野 紘子3, 広利 浩一4, 尾上 琢磨5, 河村 美由紀5, 森田 充紀5, 境 秀樹5, 日下 咲6, 松本 光史2,5, 田村 和朗2 (1.兵庫県立がんセンター 研究部, 2.兵庫県立がんセンター 遺伝診療科, 3.兵庫県立がんセンター 婦人科, 4.兵庫県立がんセンター 乳腺外科, 5.兵庫県立がんセンター 腫瘍内科, 6.兵庫県立がんセンター 看護部)
【背景】遺伝子バリアントの頻度は日本国内でも地域差が見られ、バリアントの位置や種類によって、関連がんの浸透率や表現型が異なる。今回、当院で経験したBRCA1/2遺伝子のバリアント情報と臨床的背景を検討した。
【方法】2013年2月~2022年2月末日までの遺伝外来受診者のうち、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)と診断された173人を対象とし、後方視的解析を行なった。
【結果】検出された病的バリアント(PV)は、BRCA1で41種類81人、BRCA2で35種類92人であった。頻度の高いバリアントは、BRCA1ではc.2T>G(7家系11人)、BRCA2ではc.5576_5579del(15家系20人)であった。ミスセンスバリアントはBRCA1の4種類のみであった。関連がん罹患歴があったのは、男性4人、女性117人(乳がん77人、卵巣がん61人、膵がん1人(重複あり))であった。女性乳がん発症年齢は、BRCA1PV保持者で中央値43歳(28-73歳、34人)、BRCA2 PV保持者で中央値49歳(30-73歳、43人)であり、後者で発症年齢が高かった(p<0.05)。卵巣がん発症年齢は、それぞれ中央値55歳(40-80歳、30人)と58歳(30-79歳、31人)であり、有意差はなかった。次に、PVの部位によるがんの発症人数及び年齢への影響を解析した。卵巣がん発症者のうち、OCCR領域PV保持者は約半数であった( BRCA1:17/30人、BRCA2:16/31人)。乳がん発症者では、BCCR領域PV保持者は少なかった(BRCA1:4/34人、BRCA2:13/43人)。発症年齢の解析では、BRCA2遺伝子OCCR領域のPV保持者で、卵巣がん発症年齢が有意に若年であった(OCCR領域:52.5歳(30-78歳)、非OCCR領域:61.0歳(48-79歳)、p = 0.04)。【考察】当院で高頻度に経験されるBRCA2遺伝子のc.5576_5579delは、近畿地方に多いと最近報告されたPVである。当PVを含むOCCR領域PV保持者では、卵巣がんの発症年齢が比較的若年であり、バリアントあるいは家系内の表現型に応じた血縁者対応が必要となる可能性が示唆された。