講演情報

[O5-5]リスク低減手術を含めた乳癌治療のマネージメントを考えた2症例

松本 恵1,3, 田中 彩1,3, 高尾 真未3, 稲益 英子1, 大坪 竜太1, 三浦 生子2,3, 長谷川 ゆり2,3, 三浦 清徳2,3, 永安 武1 (1.長崎大学大学院 腫瘍外科, 2.長崎大学大学院 産婦人科, 3.長崎大学病院 遺伝カウンセリング部門)
【背景・目的】令和2年度診療報酬改定により遺伝性乳癌卵巣癌(以下HBOC)が保険病名として収載され、一部の診療に限って保険診療となった。乳癌、卵巣癌既発症者に関してはリスク低減乳房切除術(RRM)、リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)も保険適応となり、癌の手術の際に同時にリスク低減手術を希望される症例も増えてきた。今回2症例を通して経験した乳癌治療とリスク低減手術のマネージメントについて考察する。【症例1】41歳女性BRCA1病的バリアント。X年2月右乳癌に対して乳房全切除術施行。ステージ2Aトリプルネガティブの診断で後術後補助化学療法(エピルビシン、エンドキサン、ドセタキセル)+放射線治療施行。X+1年8月HBOCの診断。X+2年1月RRSO施行にてオカルト癌指摘。卵巣癌2A期に対して根治術後に化学療法(パクリタキセル、カルボプラチン)を施行した。現在左乳房と腹膜癌のサーベイランスを継続中。【症例2】40歳女性BRCA2病的バリアント。X年1月両側乳癌の診断となり、遺伝学的検査にてHBOCの診断となった。X年3月両側乳房全切除術施行。ステージ2のホルモン受容体陽性HER2陰性の診断で今後術後補助療法(化学療法+放射線療法+ホルモン療法)を開始予定。【考察】症例1は、片側乳癌の治療終了後にHBOCの診断となり、RRSOでオカルト癌を指摘され2回の化学療法が必要であった。今後3回目の化学療法のリスクを減らしたいとの思いで対側乳癌発症前のRRMを希望されている。症例2は、今後卵巣機能抑制を含むホルモン治療が必要となる中でRRSOがその役割の一部も果たすと考えている。【結語】今後がん遺伝子パネル検査やコンパニオン診断などで治療前や治療早期にHBOCの診断がつく機会が増えてくる。リスク低減手術も含めた乳癌術後補助療法の検討が必要となり、ゲノム情報も踏まえた上での対応を考察する。