講演情報
[O6-1]重篤な遺伝性疾患に対する着床前遺伝学的検査の申請と承認結果
○中岡 義晴1, 庵前 美智子1, 中野 達也1, 矢嶋 秀彬1, 藤原 奨1, 森本 真晴1, 山内 博子1, 太田 志代1, 勝 佳奈子1, 門上 大祐1, 森本 義晴2 (1.IVFなんばクリニック, 2.HORACグランフロント大阪クリニック)
【目的】2014年より重篤な遺伝性疾患に対する着床前遺伝学的検査(PGT-M)症例を日本産科婦人科学会(日産婦)に申請している。広く有識者や一般人、患者会を交えた倫理審議会による議論を経て、2022年1月にPGT-M の適応や実施施設基準が変更された。旧適応下で当院より申請した症例の結果を報告する。【対象と方法】2014年より2022年3月までに、PGT-M 希望により当院受診した59例のうち、日産婦に申請した36例を対象とした。適応となる重篤性の定義は「成人に達する以前に日常生活を著しく損なう状態が出現したり、生命の生存が危ぶまれる状況になる状態」であった。【成績】日産婦より承認を受けた症例は28例であり、8例は非承認であった。非承認の理由は、1例が当院の検査体制の問題、1例がバリアントの病的意義が不明、それ以外は腎移植や骨髄移植などの治療方法の存在などにより重篤性に該当しないことであった。また、承認症例のある疾患においても、出産既往がない筋強直性ジストロフィーの1例と、成人に達する前の児に死亡が認められていない常染色体劣性多発性嚢胞腎1例は非承認となっている。【結論】今回、適応に「原則、成人に達する以前に」と「現時点で有効な治療法がないか、あるいは高度かつ侵襲度の高い治療を行う必要がある状態」が追加されたことにより、旧適応で非承認となった症例のみならず、承認の可能性がないことから申請を諦めた症例においてもPGT-M の可能性が出てきている。患者の希望をもとに、今後当院では再申請を考えている。また、新しい日産婦の見解において厳しくなった実施施設基準による施設数の減少が、患者のPGT-Mへのアクセスを困難にする可能性が生じている。