講演情報
[O6-2]単一遺伝性疾患の着床前遺伝学的検査結果に関する報告~直接法と間接法の解釈~
○庵前 美智子1, 中野 達也1, 太田 志代1, 山内 博子1, 中岡 義晴1, 森本 義晴2 (1.医療法人三慧会 IVFなんばクリニック, 2.医療法人三慧会 HORACグランフロント大阪クリニック)
【目的】当院では、日本産科婦人科学会(日産婦)の承認を受け、単一遺伝性疾患の着床前遺伝学的検査(PGT-M)を実施している。日産婦は、見解で胚の診断法は直接法、間接法の双方によるダブルセットアップを必須としている。PGT-Mを行い、間接法が直接法の結果を裏付けられず、判定不能とった症例を経験したので報告する。【症例】対象となる症例は小脳失調 精神遅滞 平衡感覚障害症候群(CAMRQ4)、常染色体潜性(劣性)遺伝形式(AR)をとる国内では初、海外でも数十例の報告があるのみという疾患である。発端者には生後半年から発達遅滞がみられ、疾患確定のため20に及ぶ医療機関を受診、5年後ATP8A2 遺伝子c.2600A>Gのホモ接合が確認された。 夫婦は、疾患確定後出生前遺伝学的検査の選択肢も提示された。罹患児であっても人工妊娠中絶の選択肢は考えられないことからPGT-Mを希望し来院、8か月後に承認され、体外受精を行い胚盤胞期胚3個を得た。結果は直接法で1個に病的バリアントがなく、2個には病的バリアントヘテロ接合型(胚A、胚B)が検出された。病的バリアントのない胚、および、ヘテロ接合型胚Aの間接法結果は直接法を裏付けるものであった。病的バリアントのない胚は、間接法により両親それぞれから染色体を引き継いでいることが確認でき、アレルドロップアウトは否定された。しかし、胚Bの間接法は、直接法の結果を裏付けるものではなかった。【結果】胚Bは、直接法・間接法結果を総合的に判断しATP8A2 遺伝子の病的バリアントの上流で染色体の組換えがおきたと推定できた。本疾患はARであること、直接法で病的バリアントヘテロ接合型と同定されていることより、移植可能胚と判断し夫婦に結果説明を実施した。夫婦は検査結果とその解釈に理解を示したが、移植には難色を示し、胚Bの移植は保留することとなった。