講演情報

[O6-3]ジュベール症候群の責任遺伝子TMEM67変異保因者カップルに本邦初のPGT-Mを行った1例

齋藤 將也1, 吉岡 陽子1, 石原 直子1, 高屋 茜1, 額賀 沙季子1, 滝澤 美智子1, 若松 侑子1, 近藤 麻奈美1, 鈴木 崇公1, 本田 理貢1, 石田 千晴1, 榊原 嘉彦1, 北野 理絵2, 白井 謙太朗3, 宮井 俊輔4, 倉橋 浩樹4, 浅田 義正1 (1.医療法人浅田レディースクリニック, 2.土浦協同病院 産婦人科, 3.土浦協同病院 小児科, 4.藤田医科大学)
【背景】ジュベール症候群(JS)は脳幹の形成異常に伴い乳児期より多様な知的・運動・視覚障害を呈するまれな常染色体潜性遺伝疾患である。現在までにTMEM67など36の原因遺伝子が同定されている。根本治療はなく長期療養を要する本疾患に対して英国などではPGT-Mが認められるが本邦での実施例の報告はない。今回われわれはJSの児をもつTMEM変異保因者カップルに対して実施した本邦初のPGT-Mを報告する。【症例】夫婦は30歳代、発端者となる第一子は、出生後MRIによる小脳・脳幹を中心とする多発奇形と無呼吸発作を認めたことよりJSと臨床診断された。7か月頃より気管切開し、在宅人工呼吸器を使用するなど全介護状態となっている。第一子の遺伝学的検査にてTMEM複合ヘテロ変異が判明し、夫婦はそれぞれ保因者であると診断された。その後、第二子を自然妊娠したが羊水検査にてTMEMの複合ヘテロ変異が判明し人工妊娠中絶を選択した。次子の妊娠を希望するにあたり小児科主治医より情報提供を受け、PGT-Mを熱望し当院を受診した。日本産科婦人科学会および施設内倫理委員会の承認を経てPGT-Mを実施した。2回の採卵で得た胚盤胞8個に対して胚診断を行い6個の非罹患胚が得られた。遺伝カウンセリングののちに非罹患胚1個を移植し、臨床妊娠が成立したが妊娠9週で稽留流産となった。【考察】本邦では遺伝疾患の患者や家族、主治医がPGT-Mの情報を得る機会が限られている。国内でPGT-M対象となった疾患の情報が共有されれば同疾患の当事者カップルが妊娠を計画する際に重要な情報となる。本症例の夫婦は胚の異数性診断の併用を望んだが日本産科婦人科学会のPGT-A特別臨床研究の組み入れ基準を満たさずPGT-Mのみを実施した。PGT-Mに併用するPGT-Aには新たな胚侵襲が加わらない点から実施基準の見直しを期待したい。