講演情報

[O6-5]PGT-A後の妊娠における出生前検査選択に関する考察~当院の経験から

田村 智英子1, 井原 千琴1, 中村 靖1, 山田 研二1, 古澤 未緒1, 紀平 力1,2, 宋 美玄1,3, 金沢 誠司1 (1.FMC東京クリニック, 2.帝京大学医学部産婦人科, 3.丸の内の森レディースクリニック)
【目的】
近年、PGT-A後の妊娠で出生前検査について相談される事例が増えているため、2015年8月から2022年5月の間に当院で対応したPGT-A後妊娠のケースを振り返り、話し合いの内容や検査選択について後方視的にまとめた。
【結果】
該当期間内に180件のPGT-A後妊娠の相談があった。PGT-Aの原理、結果の解釈、PGT-Aには2%前後偽陽性・偽陰性があること、偽陽性・偽陰性の背景要因、モザイク胚の考え方などについて説明し、さらに様々な出生前検査の選択肢の長所・短所・限界についても情報提供、PGT-A結果が正倍数体、モザイク、いずれの場合でも、PGT-A後妊娠にて胎児の染色体状況を確認するには羊水SNPマイクロアレイ解析が望ましいこと、一方、染色体異常以外の先天異常の確認には初期・中期の精密な超音波検査が利用できることなどについて話し合った結果、ほとんどの女性が精密超音波検査を選択した。また、38症例は羊水SNPマイクロアレイ解析を受検(うちモザイク胚移植例は19症例)、全例で異常なしであった。
【考察】
PGT-Aの原理や限界についてよく知らないまま妊娠しているケースも多く、あらためてPGT-Aについて解説した上で出生前検査の選択肢を検討していただくことが有意義であった。出生前検査の希望状況は、妊娠歴、不妊治療歴やPGT-Aに至るまでの経緯によって異なっていた。また、PGT-A後妊娠では染色体異常はないと考えている人が少なくなく、偽陰性の存在や、頻度は低いがPGT-Aでは検出できない片親性ダイソミーや微細欠失などもあることについて言及することも必要と思われた。一方、PGT-Aで正常と判定された胚を移植して妊娠していても不安がぬぐえずNIPTなどを受検している事例もあり、PGT-A前後の人々に対する情報提供支援の充実が求められる。なお、最近、移植前のモザイク胚の取り扱いについての相談事例も散見され、そうした事前の情報提供も有意義であると思われた。