講演情報

[O7-1]妊孕性低下が予見されるTurner症候群患児に対して卵子凍結保存を行った二症例

岩端 秀之1, 高江 正道1, 伊藤 薫1, 岩端 由里子1, 小田原 圭1,2, 鈴木 由妃1, 杉下 陽堂1, 洞下 由記1, 鈴木 直1 (1.聖マリアンナ医科大学 産婦人科学, 2.昭和大学医学部 産婦人科学講座)
【緒言】Turner症候群(以下TS)はX染色体の部分または完全欠失およびモザイクなどにより出生女児の2500人に1人程度の割合で発症する.TSでは低身長や心血管・腎疾患など様々な病態を呈し,卵巣機能不全や不妊症にも関連している.TS患者の約2/3が自然月経発来に到らず,自然妊娠率は2-5%と報告されている.妊孕性低下はアポトーシスの加速によって起こる卵子数の著しい減少による卵巣性無月経が原因となり,根本的な治療法は存在しない.これまで特に小児では経腟操作の困難さや小児卵子を用いた妊娠成績の不透明さから積極的に行われてこなかったが,欧州生殖医学会では卵巣機能が存続する12歳以上の若年TS患者では将来の選択肢を残すために,卵子凍結保存のオプションについてカウンセリングを行うことが推奨されている.今回我々はTSと診断された女児に対して卵子凍結保存を行った二症例を経験した.本研究は本学倫理委員会の承認を受けて実施している.【事例1】15歳,身長147cm,体重41kg,初経10歳,月経不順,核型45,X,妊孕性温存目的に当院へ紹介された.当院にて血中AMH2.98 ng/mlであった.調整卵巣刺激(COS)下採卵を2回行い,現在まで12個の成熟卵子を凍結保存している.【事例2】13歳,身長137cm,体重39kg,初経10歳,希発月経,核型45,X,前医にてAMH0.23 ng/ml,卵巣機能低下症が疑われ,当院へ妊孕性温存目的に紹介された.COS下採卵を1回行い,現在まで2個の成熟卵子を凍結保存している.両事例とも本人および代諾者へ遺伝カウンセリングを複数回行い,インフォームドコンセントおよびアセントを得た上で妊孕性温存療法が実施された.【考察】TSでは若年のうちに卵巣機能が根絶するリスクがある.小児卵子を用いた生殖補助医療については症例の蓄積が望まれるが,早期の卵巣機能評価や妊孕性温存の選択に関する十分な遺伝カウンセリングは、患者のQOL向上につながる可能性が考えられた。