講演情報

[O7-2]妊孕性温存治療相談で来院したターナー症候群の3例

井上 朋子, 長滝谷 芳恵, 浅井 淑子, 森本 義晴 (HORACグランフロント大阪クリニック)
ターナー症候群の女性では原始卵胞数が生来減少しており卵巣機能が低下していることが多いが、一部の患者では月経や排卵を認める。近年がん患者などに対する妊孕性温存治療が普及しており、当院へ妊孕性温存治療の相談に訪れた患者の治療経過について報告する。
【症例1】30歳未婚。幼少期にモザイク型ターナーと診断され、成長ホルモン療法を受けた。11歳で自然初経初来、以後不定期に月経は認めていたが、1年前より自然月経が来なくなり、前医で黄体ホルモン補充を受けていた。身長156cm、体重51kg、抗ミュラー管ホルモン値0.03ng/mL、FSH値33.2mIU/mL、E2値<5pg/mL。受診後8か月の間に、卵胞ホルモン補充を行いながら卵胞モニターを続け、卵胞発育を認めたタイミングで3回採卵を実施し2個の成熟未受精卵子を凍結した。
【症例2】22歳未婚。幼少期にターナー症候群と診断され、成長ホルモン療法と中学1年生時より女性ホルモン補充療法を受けていた。身長156cm、体重46kg、抗ミュラー管ホルモン値0.01ng/mL、FSH値91.1mIU/mL、E2値<5pg/mL。前医での染色体検査46,Xadd(X)(q22.1)。受診後3年間卵胞ホルモン補充周期で経過観察をしていたが、卵胞発育を全く認めず妊孕性温存治療を断念した。
【症例3】36歳結婚予定。幼少期にターナー症候群と診断された。15歳より女性ホルモン補充療法を開始している。身長147cm、体重37kg、抗ミュラー管ホルモン値<0.01ng/mL、染色体検査45,X。結婚後に挙児を希望しているが卵子発育の見込みが低い可能性や周産期リスクを説明したところ治療を迷っている。
ターナー症候群女性では月経がみられても原始卵胞の枯渇による早発閉経をおこしやすい、と言われている。卵子や胚凍結による妊孕性温存治療も選択肢であるが、卵子の染色体異常や周産期心血管系疾患を発症するリスクもあり治療の可否は慎重に検討するべきと考える。